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第六章 ヤマト視点 行く先を示す
結局、自分に関しての記憶は、徐々にだけど戻って来た。でも、『肝心な記憶』は全く思い出せないまま、時が過ぎていた。
コーコさん達はは、自分の為に色々と策を練ってくれたのに、情けなくてまた篭ってしまいそう。
でも、決して憂鬱な毎日ではなかった。コーコさんがピスタオ村を案内してくれたり、酒場で出す新作料理を一緒に考えたり。
雪国での暮らしに慣れて来た頃には、酒場の手伝いもできるようになった。
基本清掃や皿洗いが殆どだけど、自分なんかが手伝っても、コーコさん達は感謝してくれる。
ピスタオ村に住む住民とも、ある程度話はできるようになった。
武器を持っている自分に、当初は村の全員が警戒していた。自分が刀を持っていない状況でも。
けど、頻繁にコーコさんと外を出歩くようになってからは、少しずつ自分に話しかけてくれる人が増えた。
最近では、屋根の修理の協力を頼まれたり、子供達と一緒に雪遊びもする。
雪玉をかわす自分に、子供達は躍起になってしまい、夕方近くまでずっと遊んでいた事も。
でも、子供達との遊び、酒場などでの手伝いで、目覚めた当初の体の重りは、いつの間にか完全に溶けていた。
でも、雪国での暮らしを満喫する中、自分の心にある葛藤や不安は、何故か残ったまま。
自分自身を知らないことへの苛立ちもあるけど、記憶が戻らない事に対して、最近『危機感』を感じていた。
何に対しての『危機感』なのかは、自分でもさっぱり分からない。でも、自分の脳の奥の奥から、時たま声が聞こえる。
「このままではダメだ」という、自分自身の声が。
そんな中、スガー大国を治める『王』が住む城まで、自分の事を報告する為に村を出た男性が、ようやく村へ帰って来る。
男性はよほど疲れてしまったのか、会ってすぐに報告を聞くことはできなかった。
その翌日に、男性は口頭で王からの命令を自分に託す。
「『直接話を聞きたいから、城まで来てほしい』・・・と。」
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