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「それでね、私ヤマトさ・・・、ヤマトにお礼が言いたかったの」
「え?
もういいよ。助けた女性以外の人からも、何度も頭を下げてもらったから」
「いや、それもあるんだけどね
・・・あの時女性を助けるのは、私の『使命』であったの」
「・・・・・???」
コーコは突然立ち上がり、空に向かって歌を歌い始めた。でもその歌は、さっき自分達に披露した歌とは、少し違う感覚だ。
コーコの口から発せられた声に混じり、目に見えないナニかが混じっている様な、不思議な感覚。
そしてコーコが歌を歌い続けていると、突然何処からか動物がワラワラと集まり始めた。
中高生の動物であるキツネやカラスが、歌うコーコの周りをクルクルと走り回っている。
この光景から、自分はコーコの歌に秘められた力を理解できた。
「『呪歌(じゅか)』
能力を込めて歌う事で、不思議な現象を起こす。私はその使い手。私はこの
能力を使って、この村を守り続けていたの
村に迷い込んで暴れている熊を、大人しくさせて森へ帰したり。酔っ払いを
この歌で沈めた事もあったな
私の様に、特異な能力を持っている人はね、この国だけではなく、世界中に
存在している
私は正式に、スガー大国の王から、『特殊兵』として認められているの」
コーコが説明を始めた途端、辺りにいた動物は我に帰った様に、そそくさと森の中へ帰って行く。
そんな動物達に、コーコは「来てくれてありがとう」と、俺の言葉を述べる。
自分は、コーコの『使命』という言葉も理解した。そして自分が、コーコの仕事を『横取り』してしまった事も察した。
自分はコーコに頭を下げて、「ごめんな」と言うと、コーコは焦った様子でオロオロする。
どうやら彼女は、自分に対して謝罪の言葉が聞きたかったのではなく、彼女自身の使命を自分が肩代わりした事に、感謝していた。
それを聞いた自分は、再び謝ろうとしたけど、咳払いをして一旦心を落ち着かせる。
コーコの話によれば、彼女はその能力を幼い頃に身につけていたらしく、王からこの村の保護を任されたんだとか。
でも能力を持っている人は限られているらしく、スガー大国の中だけで、一体どれだけの能力持ちがいるのか、まだ分からない部分があるそう。
そして国から正式に能力持ちとして認められた者は、時に王の為に、時に国の為に能力を使う『特殊兵』としての地位を授かる。
『特殊兵』となった人は、国の中心地に集中しているらしい。でもコーコは、村を守る為に残り続けたのだ。
あの時、王からの命令を受けた男性が、コーコと長い間話をしていた光景も、彼女の話で納得できた。
彼女が自分を城まで導くのは、単に「心配だから」というわけではなく、これもまた『使命』だったのだ。
その話を聞くと、自分の肩の重りが、少し軽くなったような気がする。
「わざわざ自分の為に、危険な目に遭わせてしまう」という、自責が無くなったから。
それもそれで失礼な気はするけど、彼女が自身から真意を打ち明けてくれた気がして、少し嬉しくなってしまった。
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