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第一章 コーコ視点 雪国の朝は遅い
今日も相変わらず寒い。今年はそれほど雪が多くはなかったけど、空気が寒い期間が続いていた。
外に少し出るだけで、髪や皮膚など、体の至る所が凍ってしまいそう。更に、山から吹く風も追い討ちをかける。
この時期、『ピスタオ村』に住む住民達は、午前中は外を出歩かず、日射しが強くなる午後になると、一斉に外で活動する。
午前中の、視界が真っ白な時間帯に外に出れば、村の中でも凍死してしまう。
そしてその亡骸は、誰にも見つけてもらう事ができず、雪解け水によって川に流されてしまう事も。
ピスタオ村は山近くの村だから、国の中心地よりも雪の勢いが強い。吹雪によって家が無くなってしまう事も珍しくない。
だから午前中、住民は皆家の点検をする。隙間風がないか、脆くなっている柱はないかなど。
昨日は全然問題が無くても、今日になって急に柱が傾いている事も、この村にはよくある事。
私の住む家は、周りの家々に比べると広い方だ。その訳は、家が『酒場』だからだ。
でも、此処の酒場を経営している夫婦と私は、血の繋がった家族ではなく、『親戚』という間柄。
私の両親は、私が10歳の頃、濁流にのまれて行方知れずになってしまった。
それから私は、酒場を経営している親戚夫婦に引き取られ、今に至る。親戚同士だけど、結構仲はいい。
酒場を手伝うのはもちろんだけど、時折私が夫婦喧嘩に介入したりする事も。
私が手伝っている仕事は色々とある、主に掃除や開店前の準備、開店した後は、お客さん達に料理を運ぶ。
でも、私が酒場で担当するのは、『歌姫』として歌声や楽器をお客に披露する事。
私の歌や演奏は結構人気があるらしく、毎日の様に酒場には沢山お客が来てくれる。
大きな町にある酒場に比べると、うちの酒場はそれほど大きくないけど、人気は村以外の場所にも広まっているそう。
時々、私目当てで村を訪れてくれる旅人さんもいるくらい。嬉しいけど正直申し訳ない。
元々歌を歌うのが大好きだった私は、無くなった両親にも自分の歌を聞かせていた。
私の歌は村中で評判になって、酒場に私が歌姫として勤め始めた頃は、親戚が酒場に通い詰めてた。
でもいつの間にか、城下町からわざわざこの村まで、私の歌を聞きに来る人もいる。
親代わりになってくれた2人は、「無理しないでね」と、私の体調を気遣ってくれる。
けど、2人の料理を食べれば体調の悪さなんて一瞬で吹き飛ぶ。実際2人の料理は、生きていた頃の両親も絶賛するほど。
酒場の売り上げは、決して私一人のものではない。料理目当てで来てくれるお客さんもいれば、歌目当てで来てくれるお客さんもいる。
だからこそ、私は日々2人の仕事の手伝いを、毎日熱心にしていた。時間を忘れてしまうくらいに。
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