第一章 コーコ視点 雪国の朝は遅い

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風の強い日は、食器棚がガタガタと震えている。私はなるべき食器棚に気をつけながら、皿洗いをしていた。 こんな日は、突然食器棚が倒れたり、扉のガラス部分が割れる事もある。 ガラス部分が壊れても、どうにか直せる。でもこの食器棚も十数年以上使っているから、いつ壊れてもおかしくない。 それでも使い続けるのは、やっぱり愛着があるから。幼い頃私が、この食器棚で遊んでいると、2人はカンカンに怒っていた。 あの時2人が言っていた教訓は、今でも忘れられない。 「『食器』も『材料』の一つなのよ  だから食器にいたずらしてると、食器が料理を不味くしてしまうの」 今思うと、それは立派な正論だ。 どんなに料理が高級で、おいしそうに見えたとしても、食器が汚なかったり、割れていれば食べる気なんて失せる。 でも、綺麗な食器に普通の料理を盛り付ければ、何となく高級に見えるし、美味しそうにも見える。 叱られた後日から、私は食器棚のガラスを磨くお仕置きを食らった。でもそれは、自然と癖になっていた。 ガラスが綺麗だと、中に入っている食器も、何故か高級そうに見えてしまう。 此処は城下町から離れた田舎、それほど高級な食器は、どの家にも置かれてはいない。 でも、私にとってこの酒場にある食器の一つ一つに思い出がある。駆け出しの頃から、今に至るまでの。 でもその合間に、いくつか割ってしまった食器も、あるにはあるけど・・・。
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