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「おーい!!!」
遠くの方で、近所のおじさんの声が聞こえる。私と母が声の聞こえる方向を向くと、人が大勢群がっているのが見えた。
人々が不安な表情でざわつきながら、あたふたしている。行方不明者が見つかった時よりも騒がしい気がした。
私は気になってしまい、一旦荷物をお母さんに預けて、騒ぎのする方へ駆け寄る。
そして、群になっている人々の会話に聞き耳を立てたけど、みんなが動揺している原因はよく分からない。
まるで、初めての出来事に、皆がどう対処すればいいのか分からない様な・・・。
「こんな事ってある?」
「いやいや、ワシはこの村に住んで長いが、まさかな・・・」
「だとしてもよ、『この人』一体何処の人なのよ・・・?」
「見た目からして、浮浪者か?」
「いや、それにしては見ない服だ・・・」
私は人々の群れの中から近所のおじさんを見つけ出して、一体何があったのか聞いてみた。
いつもはニコニコしている優しいおじさんだけど、今は顔を真っ青にさせて、冷や汗を垂らしている。
「・・・おじさん、大丈夫?
何があったの??」
「うーん・・・
コーコちゃん、『あの人』の来ている服に、見覚えないかな?
学校の授業とかで、『他国の衣装』についてとか、教わった事は?」
おじさんがゆっくりと指を刺した方向には、ボロボロになった船が一艘、川の岸辺に乗り上げていた。
かなり年月が経っているのか、所々の木が剥げている。そして花には、木が朽ちた嫌な匂いが忍び込む。
それだけ見た私は、嫌な予感がどんどん湧き上がっていた。これだけ船が朽ちているのだから、中にいたモノは・・・。
そう考えると、私の背筋は一瞬で凍り、少し身震いをする。きっと皆が動揺しているのは、私と同じ考えだからだろう。
おじさんのさっき話していた言葉の中に、『異国の衣装』という言葉があった。
船に乗っていたヒトが、このスガー大国の人間ではない、別の国から来たヒトである事も予測できる。
スガー大国はかなり広大な面積を有する国。隣の国から小船で此処まで到着するのに、数ヶ月はくだらない。
貿易船の様な、食料が十分に乗せられる大きな船ならともかく、人が数日かけて作った様な安易な船でなんて、絶対ありえない。
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