憧れ

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憧れ

「…っあの、いきなりなんですけど、LINE交換してもらえませんか?嫌なら断ってください」 その人は俺の顔を見つめて何かを考えてるみたいだった。 「君は、高校生だよね?こんなことしてたら犯罪とかに巻き込まれるからやめといた方がいいよ」 発した声は低くて、心に重たく響いてきた。 「こんなことしたの初めてです。これからもしません。なので、嫌じゃなければお願いします」 目を真っ直ぐに見て「伝われ」と心の中で念じた。その人ははぁっと短くため息をついて 「QRコード出すから読み込んで」 そう言ってスマホの画面をこちらに向けた。LINEを追加すると、辰と一言書かれていた。 「名前、なんて読むんですか?」 「じん」 「これでじんかー、俺は、木偏に冬ってかいてしゅうって言います」 軽く自己紹介を済ませると、高校の最寄り駅に着いたので電車を降りて高校までの道を歩いた。今までにないくらい表情筋がゆるゆるだったと思う。
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