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ブラックコーヒーとマシュマロ
あれから俺は辰さんの家に行ったり、たまに辰さんが家に来たり、行きと帰りの電車もほとんど一緒でほぼ毎日話している。最近は、俺のわがままを聞いてくれて一緒に大人っぽいことをしてみたりしている。
「ただいまー」
辰さんの家に行くのに今ではすっかりただいまになっていた。
「おかえり、今日は泊まる?」
「あー、明日休みだしそうする」
泊まらせてくれなかったのもあの日だけで、それ以降はなんだかんだ泊まったりしている。もう、進展がどうとかの話じゃない。俺と辰さんの時間だけおかしい気がしてくる。それでも未だに付き合ったりはしていない。
「ねぇ、ブラックコーヒー飲みたい」
「柊、苦いのダメじゃん」
「飲めるようになりたい」
「飲んでみる?」
「もちろん」
そう言って、コポコポとコーヒーを作ってくれた。辰さんはひと口俺の前で飲んでみせる。毎朝コーヒーを飲んでる辰さんにとっては、俺にとっての水みたいなものなのだろう。俺も何も考えずに飲んでみた。
「うえぇ」
口に入れただけじゃそんなには感じなかったけど、飲み込んだら舌に苦さだけが居残っていて舌が縮みそうな気がしてきた。
「苦いでしょ」
「すんごく」
「とりあえず、カフェラテとかから慣れて言った方がいいんじゃない?」
「そうするけど、これだけは飲む」
苦い苦いと言いながら少しずつ減っていくコーヒーを眺める。柊は、なんでもやってみようとするし、やり始めたら最後までちゃんと終わらせる。そういう所は、俺よりも大人で好きだと思っている。これは柊にはまだ内緒の話。
「お、飲み終わった?」
「うん」
「じゃあ、これあげる」
辰さんは俺に手を出すようにジェスチャーをした。手を出すと、マシュマロ2つ。そして、頭にポンっと手を乗せてクシャっと軽く撫でた。たまに、辰さんはよく分からない行動をする時がある。まぁ、いつか分かればいいかなと思う。
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