ブラックコーヒー

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ブラックコーヒー

今日もカフェラテを目の前にテレビを並んで見る。最初はカフェラテにさらに砂糖をスプーン2杯分入れて飲んでいたけど、2週間ずっと少しずつ砂糖の量を減らしながらカフェラテを飲んでいたら、最近は砂糖を入れなくても飲めるようになってきた。 「あ、この人辰さんに似てる」 そう言って指したのは、テレビに映るカフェで彼女を待つ30代のおじさん(お兄さん)だった。 「俺そんなに老けてないだろ、まだ28だよ」 「アラサーじゃん、もうお兄さんじゃないよ」 そう言って軽く笑った。 「え、柊はこうなりたいの?」 「違うよ、俺がなりたいのは辰さん」 「だって、似てるんだろ?」 「似てるけどー、ちがーう」 「よくわかんないな」 「辰さんはね、俺がなりたいものそのものっていう感じ」 「それは、嬉しいことだな」 微笑んだ辰さんの笑顔にやられて顔が熱くなる。それを隠そうと話題を振る。 「もうそろそろさ、ブラックコーヒーいけるかな?」 「んー、いってみるか?」 「うん!」 さっきまで見てた茶色いコーヒーとは違い、真っ黒のコーヒーが注がれた。 「飲めない気がしてきたかも」 「やめとく?」 「いや、飲む」 「だと思った」 ゴクッ。ひと口口に入れてみる。 「あ、ちょっと苦いけど飲めるかも」 またひと口、ふた口と飲んだ。 「えらいな、柊もちょっとは大人になった」 そう言ってこっちを見て微笑んでくれた。 「辰さんのおかげだよ、ありがとう」 「ん、柊の頑張りがあってだけどな」 ほんの少しの恥ずかしさと大きな達成感を胸に見ていたドラマを目を向ける。きっと、大人っていうのはこうやって少しづつなっていくものなんだろう。
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