一緒のお墓に入りますので、よろしくお願いします。 By 忠道

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   香ばしそうな大きいコーン。中に絞り入れたウグイス色と白の二色の渦巻きを、アインスくんはうっとりとしながらモグモグしている。  練乳をたんまりと垂らし、小豆を沢山散らし、ウエハースまで添えて。実に幸せそうだ。 「この寒いのによく食べられますねぇ」  店の側に作られた、他店と共同の広い飲食用スペース。ランダムに並べられたパラソル付き丸テーブルには座らず、壁際の長いベンチに仲良く座りぼくたちは休息している。 「よく食べるトカ、タダミチに言われたくナイ」  掌サイズの温かいうどんを食べていたぼくを、アインスくんがなま暖かい目で見ている。  ツユが程よく染み込んだサクサクの揚げたて海老天をかじり、関西風の出汁がきいた薄い醤油色のツユをのんびりとすすった。 「誘惑に負けたんでしょうがないですよー」 「アンタ会社でナニをどんだけ食ってタか忘れてんノ?」 「『大西くん』のアレは無理やり食べさせられたんです。それに、アレは食べ物と認めたくないです。食べた内に入れるつもりもないです。栄養がある物体を機械的に胃の中に詰め込んだだけですからぁ・・・」  一片の感情すら抱くのが億劫で、抑揚のない単調な言葉しか出なかった。  それにしても初めて見た。卵焼きという名前がついた、紫と黒のぐちゃぐちゃな物体なんて。一体今日は何を隠し味に入れなんの物質を添加したのやら。 「口直しくらいはさせてくださいよー・・・」 「怖くて断れナイ気持ちはワカルケド、コノアト、イチのチャーハンも食べるっしょ? 太るヨー」  自分のことを棚に上げてよく言う。ソフトクリームにプラスチックのスプーンを突っ込んで、大口を空けている彼に全く一緒の言葉を返してやりたい。  美味しくないけれど不味いと言うには後一歩及ばない、例えに困る珍妙な味の卵焼きの味が不意に蘇り、やるせなくなって結局言わなかったけれど。
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