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「ぼくとしては今さら驚くことじゃないですねー」
《昨日のアンタらのやりとりが激しく気になるんだけど》
「なにも昨日に限ったことじゃないです。前々から知ってたんで」
《へ? あ、あれ?》
タカさんはすっとんきょうな声を上げた。驚くようなことをいつ言ったのだろう。ぼくは首をかしげた。多分、向こうも同じ仕草をしている筈。
《おっかしいなー・・・どういうこと? 二人共全然噛み合ってない》
控える気が一切ない大きな独り言だ。彼の昔からのクセ。少なくとも彼と知り合った11年くらい前からだが、いくつになったら治るのだろう。
しかしまあ、彼がそうして混乱するのは当然だ。ぼくはその理由を知っているし、謎を説明することも容易に出来る。
「あ。アインスくんが・・・」
口を開きかけたぼくのそれを全く別の言葉に変化させたのは、ふと目についたアインスくんの姿だ。
《アインスがどうしたって?》
目と鼻の先。ぼくの元に戻ってくる途中だったであろう彼が、こちらに背を向けて呆然と立っているのは、きっと、彼がたたずむ丸テーブルの奥の奥、その光景に原因がある。
「アインスくんが好きそうなタイプの女の子が、チャラいのにナンパされて困ってます」
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