一緒のお墓に入りますので、よろしくお願いします。 By 忠道

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 よく笑う人だ。いつか腹筋がとんでもないことになるかも知れない。その時は是非側で拝見していたいものだ。 「今はともかく、なんで毎回ぼく達にもいちいち外国語で言うんですかねぇ?」 《ははっ・・・あー。なんかねぇ、外国語の方が悪口のバリエーションが豊富で個性的だから、覚えるの楽しいっつってたかも?》  込み上がる笑いを必死で押さえながら、タカさんは陽気に言って少し咳き込む。 「個性的・・・と、言うか意味不明ですよー。ちょこちょこ調べてネット使って翻訳してますけど、訳分からないこと言ってたりしますね。卵焼きに行けとか」  さりげなく目を向けたRibbonの画面が、知らぬ間に変化していた。  新発売の女性向けライトノベル。これは、書籍に使用する表紙がそのまま表示されている。正統派ファンタジーだと思われる雰囲気の中、まるで西洋の王子様、きらびやかな衣装をまといたたずむ美麗な男性二人の姿。  ジャンルはファンタジーに違いないが、危険な薔薇色の香りが濃い。俗に腐女子と呼ばれるモノをターゲットにした、最近の傾向を露骨に表している。 《それが狙いなんじゃないの? 好き放題言ったって相手には通じないし意味不明だし・・・一方的だから気分スッキリしそう》 「言われたこっちはモヤモヤしかしないですけどね。しっかし変な方向に意地悪くなりましたねー。子犬みたいにキラキラした子だったのに」  タカさんがまた笑う。しかし、なんだか悲哀を感じるやるせない調子で。 《多分、原因はオレらだから・・・》 「否定出来ないのが辛いですね」 《可愛かったよねぇ。今と違う意味で昔は可愛かった》 「今じゃ平気で人を地獄に陥れて、嘲笑いますもんね」 《むなしくなってきたなぁ。もう振り返るの止めよう、胸が張り裂けそう・・・》  同感だ。アインスくんの可愛かった頃に思いをはせるより、目の前の面白い現実を見る方がずっと楽しい。 「じゃあ実況続けます。に、しても怖いですよねぇ・・・あんな風に外国語ベラベラ喋られながら詰め寄られるの。ぼく典型的な日本人なんで、愛想笑いしながら即逃げてます」 《あれ? まだ喋ってんのアインス。いつもならとっくに・・・》  ぼくはクスリと、自分でも引くほどに極悪な微笑をこぼす。 「逆ナンと勘違いされたんじゃないですか? チャラいのがテンション上げながら、身振り手振りで絡んでってますね」  
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