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婚期を逃した男女、何らかの事情や問題があって結婚しづらい男女、その中に隠れた上玉を狙っている男女。
多分、居るのはこのくらいなのだから。やっきになって相手を探す気持ちも分からなくはないけれど、だからといってこんな得体の知れない集まりに放り込んだ我が両親の要らぬお節介を恨む。
━━何が楽しくてルックスと経歴と身長と年収ばっか見てる、流行に乗り過ぎて同じような化粧した女しか居ない集まりに参加するんだよ男はっ! もっといい女は他の場所に居るんだよ、婚活パーティーなんかに来るなよ勿体ない!
と、特に美味くも不味くもない葉っぱを再び口に突っ込みながら、呆(ほう)ける。
その、女と称した人間とは、肉体的にも戸籍上でも同じモノに分類されるのであり。
はたまた、うだうだと細かいことを気にする精神的な部分がまさしく、世間一般に言われている女性像のそれだと、自分自身が分かりきっているだけに凄くむなしい。
帰りたい。
━━あー。男にガツガツしてると思われたくねぇ。帰りてぇ。
だからせめて、自分が上玉狙いで参加した訳ではないと暗示させる為に。参加者全員が胸に付けた職業と名前が書かれた札は、誰一人として見ていない。顔面も見ていない。
厳密に言うと多少視界には映るが、意識を向けていないので同じこと。
「隣、よろしいですか?」
「いけません。私のお祖母ちゃんが座っているでしょう? ちょっと透けていて見にくいですけれど」
六人目に、何故か突然降臨した自分でもよく分からないことを、あたかも本気で言っているかのごとく物々しげに告げる。
実際はお祖母ちゃん、二人共健在だが。
ついで、いい加減に浮かんだそれっぽい話を淡々と呟いてやると、今回もさりげなく、華麗に、気配が消えた。
私も彼らのように華麗に帰りたい。
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