かえりたい。By 歩(あゆむ)

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   ━━いい加減『こいつは男探す気ないんじゃないか?』ってそれとなく察せよ皆様方ぁあぁあ!!  生花だと思われるごてごてしたモノがいけられた花瓶。それを真ん中に置いた丸いテーブルには、水が入ったガラスのポットが三つ。  一つは完全に私が独占状態で、2リットルくらいあっただろうそれは多分今や1リットル。  遠慮なく手元のグラスに注ぎ、表面上はお上品に飲みつつ、喉に詰まった葉っぱを胃へと強引に流し込んだ。  ━━確かに私この中じゃ若い方だけど! 恵(めぐむ)の仕業でどうにか、中の中と称される私の顔面が若干詐欺まがいの特殊メイク状態になっちまってるけど!! 嫌だ帰りたい帰って惰眠むさぼりたい。  そうこうしている内に少なくなってきた食物。また、直ぐ近くのショーケースの中や長いテーブルの上にある、沢山の料理の中から選んで持ってこなければ。  ちなみに恵とは、一歳年下の私の妹である。  残念ながら彼女、現在、私の部屋に居座っているどころか「二次会三次会は絶対行ってこいや。今夜は帰ってくんな」と、半ば強引に私の寝床を占領。  オマケに両親から預かってきたという、自由参加となっている二次会から三次会までの参加費五万円と会場までのタクシー代、参加証明書だとか例の名札だとかが入ったハンドバッグを無理矢理持たせ。化粧からドレスアップから頭のセット全てを施した姉を追い出し、無情にも鍵をかけた。  ━━なんだよ帰ってくんなって! ヤってこいってか!? 行きずりの野郎とずっこんばっこんしてこいって言ってんのかあいつ!??  姉は、妹を、激しく憎んでおります。なう。  ずっこんばっこんなんて面倒くさいことよりも、姉は睡眠を所望するのだ。 「じゃあ、お祖母ちゃん退けますんでぼくは座ってもいいですか?」  そして私は、水を吹き出しかけた。  出るか出ないかの瀬戸際、辛うじて堪え一瞬体を強ばらせた後グラスを口から離すと、左手で口元を覆い、さも、ぼんやりとしていたところに突如話しかけられて驚いたのだという風に装う。  普段は急に声を掛けられた所で動揺などしない。ずっこんばっこんの所為だ。恵め、呪う。
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