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「地獄に落ちろ犬ッコロめ!」
男は胸を膨らませてその声を廊下中に響き渡らせた後、カタパルトの要領で背中側のモニタールームに左腕を投げ入れた。信号音は無音との間隔が短くなりはじめ、その音差が表裏一体へと落ち着いたころ、床を跳ねてモニタールームの奥に消えていった。
マードマンは顔をうずめる。
発光。
爆発。
モニタールーム内の電子機器や事務具類が倒壊し、けたたましい轟音のバックコーラスとして伴いながら空間を切り裂いた。
衝撃波がセクターの廊下を走り抜け、天井からはパラパラとコンクリート片がパン屑のようにこぼれ落ちる。
残響はセクター間をつなぐ連絡通路へと去っていく。その空間に佇んでいた音の全てを呑み込んで、まとめて外へ押しのけてしまったのだろうか。廊下は再び沈黙に包まれた。
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