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マードマンは左腕だけで身体をゆっくりと持ち上げて、新しく瞳孔に内蔵したライト――2000ルーメンとは聞いていたが、実際に灯してみるとそれほどまでの出力は感じないと彼は思いながら――越しにモニタールーム内に視線を走らせる。
まだ耳鳴りは止まない。
硝煙の隙間から見えたそれは、さながらスクラップ工場の様相を呈していた。明朗にその位置が検討できる爆破地点においては黒い光が壁に照射されているようで、マードマン自身もカタログスペックでしか把握していなかった爆発の威力を実像的に物語っていた。基盤が飛び出た電子機器や粉々になった事務椅子の破片が辺り一面に散らばり、瓦礫の山を築いている。
パチパチと火を上げる書面やそのクズなどが視界をチラつき、マードマンにはそれが、自分が得るはずだった報酬が引火して燃ゆる像にも映った。
破壊した設備の内どれだけが換金に値したのかを考えると頭が痛くなる――尤も、そのようなプラグインは装備していないが――。くず鉄を拾い帰ってくるだけじゃ賭した命に見合ってもいなかった。
機能不全の右足と爆破に使ってしまった左腕のことを思えば、収支面においては本当の意味での骨折り損としか考えられず、進退窮まった状態がよりいっそう収縮されるという事実に直面していた。
だが、もたらしたのは決して悪い結果だけではなかった。マードマンは歓喜
の湧き上がる様を、状況を理解したイコールの先で五身に感じていた。
″これなら生きてもいまい。やった。俺がやったんだ。ツいてる、やっぱりツイてるんだよ今日は、クソ″
【番犬】を一人始末してみせた。自分たちの存在と同等の生き物でありながら、長い歴史の中でたまたま手に入れただけの権力を振りかざして自分を始めとする同胞を弾圧し続けてきた、あの、忌まわしき連中を。
念願の一矢を報いることができたのだ。
マードマンはそれが至上の幸福であるという結論にいたり、安物のCPUは処理過程を終了させる。
気分が高揚し、もう一度腰を下ろすと大口をあけて笑い出した。機構の噛み合いも悪くなっているようで、ひと呼吸のたびに歯車が軋む音がしたが、それさえも自身の感情が発露しているだけのことだろうと、この時ハートマンは分析する。
いや、心に空いた虚しさを埋めるにはそうするしかないのだ。
「どうだ、みたか、なぁ、おい‼ その瓦礫の山がお前のお墓だ、お似合いだぜ。俺のションベンでR.I.Pでも刻んでやろうか‼」
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