EP.1

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 あふれ出た衝動も底をつき、高笑いの勢いも収まり始めた時だった。マードマンは背中から覆いかぶさるような得も言われぬ圧を感じ、違和感を確かめようと無意識に首を捻った。瞬間、彼のコンピュータはその状況を理解するのに時間を要することになる。  モニターが投影したそれは、データバンクに眠る【レンコン】という植物根の、繊維に沿わない断面図が最も類似した画像であった。しかし、資料のレンコンに対して眼前のはラッカー塗装でどす黒く、孔の大きさも採寸されたように均一的で、配置もまた秩序が伴われている。  鉄製のひんやりとした無機質さは殺意を構造化したもので、その切っ先は間違いなく、今、自分に向けられていた。 「今のは」煙の中から姿を現したのは男性の影だった。彼の視界においてもシルエットが独り歩きしているかのようにカラスの濡れ羽色である理由については、爆発の煤を被っているためか、闇に紛れているためか判別はつかない。  丈長のポンチョと無造作に跳ねるショートヘアー。弓的を斜めに切って、ひしゃげたV字に配置したような陰深い三白眼は、無機質さから来たす冷血の装い。  その瞳で窓枠越しにマードマンをじっと見下ろし、腕に直結した22口径回転小銃機構の銃口のべ5門を、彼の顔面に強く押し付けた。いわゆる5砲身ガトリング砲を取り回しやすいサイズに小型化した形状に見えるのだが、機構部には手のひらとしての可動域を想定した切れ込みや手動操作機構(マニピュレーター)を指す印字が刻まれていることから、換装武器ではなくあくまで男の腕であることを表明していた。  指のそれぞれが銃身と銃口を兼ねていて、イソギンチャクの影絵を作るようにすぼめた形がガトリング砲を模ってみせるのだ。 「今のはいいパワーだったぞ、なあ、おい。正式ライセンスを持った【()り師】の爆薬だな」 「どうして生きてやがるんだ」マードマンは狼狽した。死体を確認したわけではなかったが、爆発の威力から鑑みてもまず無事でいられる筈がないのは火を見るよりも明らかであった。  自分の想定した物理演算の外から起きることまで思慮できるCPUを搭載していなかったことを強く後悔した。  この落胆をぶつける先が見当たらず、また今の状態ではそこに至ることさえもままならない。
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