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黒猫は不吉
モグは少しずつ元気になってきた。お母さんがモグの体を綺麗に拭いてくれて、僕の部屋へ箱と一緒に移してくれた。
少しずつ皿に注いだミルクも自分で飲めるようになり歩けるようになってきた。ただ、警戒をしている様子で、中々なついてはくれなかった。
「それじゃ、モグ。僕は出掛けてくるからね」そういい残して僕は部屋を出た。
「遅くならないように帰ってくるのよ」お母さんの声がする。
「うん、夕方までには帰ってくるから」自転車に乗って家から飛び出した。
久しぶりに入院していた病院にいって、あっちゃんに会いに行こうと思った。
喘息を治すには体力をつけることも大切だと言われたので、気が向けば自転車で近所をウロウロするのが日課になっていたが、少し遠出を兼ねての行動であった。
病院に到着して、看護婦さんにあっちゃんの病室を聞こうとしたが忙しそうであったので、とりあえずあの屋上に行ってみようと思った。
エレベーターで屋上の手前の階まで上がり後は階段を登っていく。
屋上に到着すると心地よい風がふいていた。
「あっちゃん!」偶然にも屋上のフェンスの辺りにあっちゃんがいた。
「あっ、ゆうちゃん!来てくれたんだ!」あっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「うん、近くまで来たから、あっちゃんはどうしてるかなと思って」あっちゃんに会うためにやってきたのだが、そこはオブラートに包んでおく。
「そうなんだ、嬉しい」あっちゃんは僕の両手を包むように握った。それが嬉しいような恥ずかしいような気持ちであった。
「ゆうちゃんは体の調子いいの?」心配してくれている事が嬉しい。
「うん、少しずつ運動して体力つけて治していこうって先生に言われたから頑張ってるよ」
「そうか、私は胸の病気なかなか治らないのよね……」悲しそうな顔で彼女は空を見上げた。少しの間、会話が途切れてしまう。
「そういえば、この間黒い仔猫が家の前で倒れていて助けてあげたんだ。ちょっとずつだけど元気になってきて、家で飼うことになって、名前はお母さんがモグって名前にしたんだ。」なんとか、会話が続くようにモグの話をしてみた。
「黒猫か……、黒い猫ってあまり縁起は良くないっていうから、飼わないほうがいいんじゃないの?それに動物飼うとまた喘息酷くなると大変だよ」楽しい会話をしようとしたが逆効果であった。
「そうかな、でも可愛いよ」なついていないけれど……。
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