今夜、迎えに行きます……。

和 解

「そうね、たしかに黒猫は不幸を呼ぶってよく聞くわね」夕飯時、僕があっちゃんから聞いた話をお母さんにしてみた。

「でも、モグが来てから嫌な事なんて起きてないと思うけどな」僕はご飯を口の中へかけ込んだ。どちらかというと、最近は体の調子もいいほうであった。

「お母さんが小さい時は、黒猫が目の前を通り過ぎると不幸になるとか言ってたけどね」そう言い残すとお母さんは台所に自分の食べた食器を持って洗いに行った。

「ごちそうさま！」僕は自分の食器をお母さんに渡してから、冷蔵庫の中のミルクを取り出して、モグ専用のお皿にミルクを入れてから部屋に運んで行った。

「モグ！ミルクを持ってきたよ！」眠っているモグの前にお皿を置く。モグはお腹を上に向けて無防備な状態で寝ていたようだが、僕の気配に気づいてサッと起き上がった。まだ、警戒をしているようだ。

「はい、どうぞ」ミルクを床に置くと皿の近くまで歩いてきて舌でペロペロ掬って飲んだ。

「よしよし」僕はモグの頭を撫でようとすると何かを感じ取ったように飛び避けた。

シャー！！

「どうしたの？」モグの様子がおかしいので手を差しのべようとする。

「い、痛い！！」モグは僕の手を前足で引っ掻いた。人差し指の先から血が滴り落ちる。
　その指を口で拭って床に落ちた血をティッシュペーパーで拭いた。

「酷いよ、モグ！ああ、こんなのお母さんに見られたら捨ててこいって言われちゃうよ……」指を咥えながら溜め息をつく。

みゃー……

　モグは両耳をペタりと下げて少し申し訳無さそうな顔をした……、ように見えた。僕の膝の上に乗ると自分が傷つけた指の辺りを舌で拭った。

「ありがとう」なんだか嬉しくなって、モグに微笑みかけた。モグは、照れ臭そうに下を向いた……、ような気がした。

「どうしたの？雄太、怪我でもしたの？」お母さんが部屋のドアをノックする。
「ううん、大丈夫。ちょっと紙で指を切っただけ！」

「きちんと、絆創膏を貼っておきなさい。それと、お風呂沸いたから……、モグも元気になったみたいだからついでに体を洗ってあげなさい」そう言い残すとお母さんは、階段を降りていったようだった。

「よしっ、モグ！一緒にお風呂に入いろうか！」

にゃ～！

モグは嬉しそうに返事をした……、ような気がした。