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綻び
その日、生垣にある綻(ほころ)びを見つけたのは、本当にたまたまのことだった。
マナカはそのとき、最後に食べようと大事にとっておいた目玉を手のひらでころころと転がしていた。
一体この目は何を見ていたのだろうと、思いを馳せていたのがよくなかった。前を見ていなかったマナカはバケモノとぶつかり、その拍子に目玉を落としてしまったのだった。
ぎょろり、と百の目でバケモノがこちらをにらみつける。マズイと慌てたマナカは急いで謝罪した。
……何事もなくバケモノが去ったはいいものの、そうこうしているうちに目玉はどこにいったのかわからなくなってしまう。マナカは身をかがめ、必死になって探したそのときのことだ。マナカは生垣に、ぽっかりと開いた穴を見つけたのだった。
この世とあの世の境界、間(あわい)に建てられた屋敷がある。
数多のバケモノがあの世へと行こうと試みるも、生垣の結界が邪魔をして進むことができない。あの世には食べきれないほどの人がいるというのに何とも勿体ない話だというのは、バケモノの間では広く言われることだった。
ところが落とした目玉は、ある筈のない結界の綻びを抜け向こう側へと転がっていってしまったようだ。マナカはびくびくと周りの様子をうかがいながら、潜り抜けていった。
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