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それは崖の下で、満開の花咲き乱れる園に倒れ伏していたものだったり、光がカーテンのように差し込む海の底や、あやうく業火に焼き尽くされそうになっていたところをすんでのところで助け出したものまであった。
目まぐるしく変わる景色に、少女はときに喜び、ときに驚き、ときに悲しそうにとくるくる表情を変えた。少女が笑えばマナカの胸に暖かいナニカが満ちる。こんな時間がいつまでもいつまでも続けばいいと、マナカは満ち足りた気持ちでいた。
「あぁ楽しい。こんな気持ちになったのはいつぶりのことかしら。何十年、いえもしかしたら何百年も独りでいた気がするの。ありがとうマナカ。あなたはとっても素敵なバケモノね」
でも……。少女は何かを言いかけて、ことりと顔を伏せた。マナカは少女が涙を流しているように見えたので慌てて少女に身を乗り出し、その細い体が崩れないように支えた。少女のためならきっと何でもできるに違いないのに、何故少女が泣いているのかわからないマナカは、おろおろと狼狽えるばかりの自分が腹立たしかった。
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