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サスペンスドラマの主人公のように『殺人』の二文字が頭を過るが、実際にはそんな事件性などなく、何か不慮の事故や偶然が重なって起こった悲劇なのかもしれない。
「死」に慣れた看護士達の対応は、些か冷たくドライには感じられたが、特段、不自然な様子も見受けられなかった。
目の前の失われた命が…………
只々、悲しかった。
(………もう一度、会いたいよ
お祖父ちゃん………………)
高齢とはいえ、祖父の死を受け入れ難く、
涙ぐんだ私だが…………
ふと、奇妙な事に気付く。
外れた呼吸器の近くに………
黄ばんだ『歯』が落ちていたのだ。
本数は少なくなっているが………
それは祖父の歯と同じ色だった。
開ききった闇のような祖父の口腔内にギョッとする。
やはり、死ぬ時は余程、苦しかったのだろうか…………?
意識なく、身動きも取れない筈なのに…………
それでも、最期の最後…………
祖父は不自由な体で暴れたのかもしれない。
抜け落ちた歯は………
祖父の苦しみの象徴にも思えた。
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