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事件性が、まるで無い訳ではなかったが、
誰も、その事には触れない。
只々、悲しみを押し殺した空気だけが漂っていた。
「……………う゛ぅ゛……っ」
呻き声のようなものが聞こえた気がして……
私は、ハッとする。
祖父の開いた口の中から、その音が聞こえたので、一瞬、私は祖父が生き返ったのではないかと思ってしまった。
…………だが、当然そんな事はなく…………
周りを見回しても、誰も、その声を聞いていない様子だった。
――――やはり空耳なのだろう。
それに、何より、あの声―――――
か細い呻きとはいえ、祖父の声ではないような気がする。
もっと、若い…………
女性の声だったような―――――。
少し、不気味な気持ちを抱えながらも、
誰にも言えぬまま、私は葬儀に参列した。
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