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「大丈夫だよ、山の生きものは山神さまに守られているんだ。もしどうしても気になるのなら、山に向かって拝んでおくといいよ」
男は早速ガレージの中に車を移動して、作業用ワゴンの上に工具を並べ始めている。
「今晩はうちに泊まっていくといいよ。空き部屋ならあるし、きっとこれもなにかの縁だろうから」
彼は鈴宮の肩を優しく叩いた。
二階の自宅に連れて行かれ、食事中だった男の家族たちに混ざって、鹿鍋をつついた。
冬のあいだは猟師をしているという男の父親から、これまでにこの集落で起きた不思議な話をいくつも聞かされた。
山で得体の知れない何かを見た。吹雪で遭難しかけたとき、どこからか声が聞こえて救われた。色々だ。
勧められるがまま酒を飲みながら、話に耳を傾けているうちに、この一帯では不思議な現象はよくあること、気に留めるほどのことではないのだと思えてくる。
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