優しい恋の忘れ方

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 二階の部屋まで一緒に上がり、ベッドにバタンキューした拓郎の靴下とジャケットを脱がせる。 「……寒いよぉ」  拓郎がブルッと首をすくめ丸まった。 「はいはい。ちょっと待ってろ」 「やだぁ、さむいぃ」  シャツのボタンを外そうとした俺に拓郎がしがみつく。 「おいおい。外せないから」 「みきちゃんあったかいねぇ」  拓郎は俺のコートの中に顔を突っ込み、胸に顔を埋めてきやがった。 「なに潜ってんだよ。そこは布団じゃねぇ。今かけてやるから」 「みきちゃんのきょーきん……おっぱいみたぃ……マッチョだねぇ……」  振り払うこともできず黙ってると、スースー穏やかな寝息が聞こえてきた。  「……たくっ」  力の抜けた拓郎を剥がし、シャツのボタンを三つ外すと、布団をかけてやってからズボンも脱がせた。足が冷たくなり、さらにイモムシのように拓郎が丸まる。その上に毛布もかけてやった。    ふう。やれやれだ。  髪をそっと撫でながら、布団に半分埋まってる安らかな寝顔を眺める。寝顔は小学校の時から変わらない。いい男に成長したけど……。 「…………」  いつまでもこうしてたいけど、帰らなきゃ。 「……おやすみ」
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