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「んじゃ、おつかれ」
「イエーイ! おつかれ~!」
翌週末、ずっと携わっていた仕事が終わり、しかも予想よりずーっと良い結果を出し、俺たちはいつものラーメン屋で夕食を済ませたのち、宅飲みで祝杯をあげることにした。拓郎の好きなジントニックやモヒートなんかの爽やかスッキリ系の酒とツマミも大量に購入。
「三ヶ月間、ホントにお疲れ様!」
「ふははは。うん。大変だったけど、すげー楽しかったよね」
愚痴を吐くでもなく、拓郎がサラリと言う。きっとそれが本音で、誰かのせいで苦労したなんて恨み言は絶対言わないし、きっと忘れてる。そういうところが拓郎のいいところだ。
「……うん。そうだな」
「今回さぁ、みきちゃんと一緒に仕事できて俺、嬉しかったよー。いっつもさぁ、あっちの現場、こっちの現場って離ればなれじゃんねぇ~」
思いがけない言葉をもらって体温がちょっと上がる。考えることもなく、瞬間的にいつものおちゃらけが口をついた。
「俺も。いつもさ、拓郎って現場で大丈夫なんかな? って思ってたけど、意外としっかりしてるし頭が切れることもわかったからよかった」
「えーっ! なにそれ! どういうことぉ?」
「冗談だ」
「ふはははは。そっか~」
拓郎はご機嫌だった。この三ヶ月間、がっつり酒を飲む機会がなかったこともあり、ゴクゴク飲んでグラスを空ける度に、「はー! 美味しい!」と嬉しそう。俺はチビチビとグラスを舐めながら「早い早い」と拓郎をたしなめた。
だいぶ出来上がった拓郎が、ご機嫌なまま「俺達の仕事、振り返っちゃう?」とリモコンを操作した。テレビから流れてきたのは、本当にドラマの一話目。
マジかよ。俺、これ何回も観てんだけど。と思いつつ、そんなこと言えないから、結局観るハメになった。
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