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「ちょ、ちょっと、ちょ……」
そのままズルズルとソファへ押し倒されながら、拓郎を観察する。俺の上で意識を失う可能性もある。慌てるのは早いかもしれない。でも拓郎は無表情のままシャツをズボンから引き抜き、中に手を入れて服を脱がそうとしてきた。
「ちょ、ちょっと。ちょっと待った。何やってんだよ」
流石に焦って、拓郎の肩をパンパンと叩く。なのに拓郎は俺の腹に顔を埋めてモゴモゴ言った。
「ごほうびちょうだい」
「は? 何が? 何がご褒美なの?」
何が起こってる? 誰かと間違えてるとか? てか、間違えるって、そんなことある?
拓郎はグイと更に服をめくり、「はいはい。脱いで」って感じにシャツのボタンを全部外してしまう。俺はされるがまま。拓郎を凝視することしか出来なかった。拓郎は俺の半裸を見ても躊躇することなく、次にズボンを下着ごと下げようとする。
「ちょ、ちょっと、ストップ! ストップ!」
「ストップなし」
「ストップなしって……な、なんで、なんで、そんなことすんの?」
拓郎の手がピタッと止まり、ガバッと顔を上げた。黒目ばっかりの目で俺をジーッと見て、「なんでって、みきちゃんが好きだからだよ?」と、あっさり言う。
「そ、そんなの、初耳なんだけど……」
と、しか言い返せない。
「みきちゃんも俺のこと、好きでしょ?」
当然のように言われ、「勘違いだ」と言えず黙ってしまう。
俺の「好き」を拓郎が、しっかり把握していることは前から分かっていた。でも、それはあくまでも長い付き合いの「友達」の範囲の好きで。もっと言えば、家族みたいな「好き」で。
今日のラーメン屋でも、労うつもりで、「拓郎は家族より一緒に居る人間だから、これからもよろしく」とは言ったけど、そんな受け取り方してるなんて今の今まで知らなかったし。
拓郎の「好き」も俺と一緒なんて……嘘だろ?
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