川岸の恋

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僕は折返し電話してみた。 中々出てくれない。 さっきの彼女の電話は意味が分からないうちに切られてしまったからだ。 何度目かに通じた。 でも彼女は黙ったままだった。 「マイカ?聞こえる? 僕だけど分かるよね...」 息遣いは何となく聞こえて来る。 「あのさ、よく分かんないんだけど多分誤解してると思うし...」 「何なりと言い訳して。 最後に一回だけ聞いてあげるわよ。」 彼女は話を遮って、 凍る様な声で言った。 「いやいやだからさ、そうじゃなくて。何時どこで何を見たの? 間違いなく僕だったのかな? 全く覚えがないんだけど。 さっきの電話じゃ一方的すぎて意味分かんないじゃん。」 「さっき目撃した、喫茶店で、見たのはこれで3回目。 もう十分でしょう。 私いいの、関わりたくないの。 だから、もう終わりにしましょ。 言い争いとかしたくないし... ほんとにもう傷つくのイヤなの。」 「あぁ、やっぱり誤解してる。 近いうちに話そうって思ってたし二人で話し合いもしたいって思ってたんだよ。」 「そう...そんなに()らして面白い? 話し合い? いいじゃん、若くて可愛くてピチピチの女が出来た! THE END! それでいいわよ!」 やはり一方的に切られた。 彼女はいつも柔和で優しいのに、早とちりで思い込みが激しくこういう時は人の話を聞かない。 僕は明日、休みを取って彼女としっかり話そうと思った。こう言う事は早いに限るし(いず)れ話そうと思っていた。 次の日、朝7時過ぎ。 彼女は大体7時半にはアパートを出て仕事に行くから玄関が見える場所で隠れて待っていた。多分あの様子だと聞く耳持たなそうだけど、バス停迄歩く10分間でもいいと思っていた。 しかし出て来ない。 8時過ぎて9時になろうとしていた。 「ひょっとしてもう出たのかな?」 そう思ってアパートの方へ歩きかけるといきなり彼女が出て来たので僕は思わず身を隠した。 何だか腫れぼったい眼をしていた。 それにジャージ姿でラフな感じだった。 「どこへ行くんだろう?」 そう思っていると川の方へ降りて行った。 僕は見つからない様に後をつけた。 二人でよく散歩する川岸だ。 彼女は小さな橋を渡って上流の方へ歩いて行った。
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