こういうことだったのかな。

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「お――っす!」 教室に来た賢一が、大きな声で挨拶をした。うぃ――っす、おはよ――っと、クラスメイト達も笑顔で挨拶を返す。友人の一人が昨日放送されたバラエティー番組の話をすると、賢一はそれ見たぁ!といいながら椅子に座った。 賢一と友人達が番組のことで盛り上がっていると、賢二が教室に入ってきた。賢二はチラッと賢一を見ると苦い顔をして席に着いた。そしてこの時いつも同じことを思う。 『何であいつと同じクラスなんだ。クラブまで一緒だし……』 賢二が溜息を吐くと、学校のベルが鳴った。 昼休み。賢一と友人達は一緒に弁当を広げた。腹が空いていた賢一が勢いよく弁当のおかずをかき込む。おいおい、誰も取らねぇから落ち着いて食えよと友人が言った次の瞬間、賢一はうぐっ、ゴホッ!!と喉を詰まらせ咳き込んだ。ほらぁ!と背中を叩かれようやく落ち着く。 「あーびっくりした」 「こっちがびっくりしたよ」 「わりぃわりぃ。すっげー腹ペコだったし、父ちゃんの弁当マジで美味いから」 「父ちゃん?母ちゃんじゃなくて?」 友人の問いにえっという顔をして、言ってなかったっけ?うち母ちゃんいないんだ、と賢一が言った。知らなかった友人達はえっと驚き、互いを見た後申し訳なさそうにごめんと謝った。いいよ気にしなくて、と賢一は明るく返した。 「賢一がこんなに元気なら、母ちゃんも安心だな」 「だといいけど」 そんな話をしながら弁当を食べていると、賢二が席にきてクラスの奴らにそういう話をするなと言った。あぁわりぃ、もう言わないと軽いノリで言う賢一を見て賢二はイラッとしたが、何もいわずに教室を出ていった。 「会話の流れでそういう話になっただけなのに…」 「賢二なりに気を遣ってるんだよ。こういう話になると気まずくなるから」 『そうかな…』 友人達は、気を遣っているのではなくただ単に賢一にケチをつけたいだけだと思ったが、口には出さなか った。
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