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賢二は受話器を置くと家を飛び出し、自転車をとばして学校に向かった。
“実は…賢一が、自ら命を絶とうとした”
『えっ…!』
“昴が止めているところを、僕と錦野先生が通りかかって…どうやら屋上に行って、手首を切るつもりだ
ったようだ。ブレザーのポケットから、カッターナイフが見つかった”
『!』
“『俺は生きてちゃいけないんだ!』って泣いて叫んで凄く抵抗したけど、何とか階段から引きずり降ろして保健室まで連れてきた。今は、錦野先生と小倉先生と昴がついてくれている”
“理由は、お前達の間で起きた、嵐、…だな?”
「賢一…!」
学校に着き、賢二は下駄箱で靴を脱ぎ捨て、裸足のまま保健室へと走りガラッと戸を開けた。安畑と錦野と小倉と昴が入口の方を向く。賢一は四人に囲まれ、一番手前のベッドに座っていた。横を向き、目を赤くして項垂れている。こんな憔悴しきった賢一を見るのは初めてだった。
賢二は賢一の前まで行くと、胸ぐらをグイッと掴みあげた。賢一が怯えた目で賢二を見上げる。
「ちょっ、落ち着け賢二!…」
「母さんとの約束を、破るつもりか」
「!」
「俺と一緒にいるって、味方になるって言ったのは嘘か!!」
「…!!」
賢二の意外な言葉に、表情に、賢一は目を大きく見開いて驚いた。賢二の目から、今にも涙が零れ落ちそうになっている。そして―――
「よかった、死ななくて…!」
賢一の肩を抱き、涙を零して泣いた。一瞬耳を疑ったが、間違いなく自分に向け発せられた言葉。嬉しくて、バカなことをしたと悔やんで、賢一もギュッと目を瞑って泣いた。四人も意外な展開に驚いたが、賢一と賢二を見てよかった、と胸を撫で下ろした。
一頻り泣いた後、賢一と賢二は顔を見合わせて頷き、“嵐の全貌”を四人に話した。
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