17人が本棚に入れています
本棚に追加
騒がせてしまったことを詫びて賢一と賢二は学校を出、暗い中自転車を二人乗りして家に向かっていた。賢一は賢二に背を向け、後ろの荷台に乗っている。まだ少ししょげている賢一がぼそっと言った。
「ご…」
「言うな」
「……」
「お前は父さんと母さんを独り占めして俺に孤独を味わわせた。けど、俺もそのことを恨み続けて、お前を追い詰めた」
“死を思わせるほどに”
そう思うと賢二は胸が苦しくなった。
「でも、何で…凄く嬉しかったけど、何で“死ななくてよかった”って…」
「……」
賢二はその問いには答えなかった。(密かに想いを寄せる)美香が言った言葉のおかげ、などとても言えない。無意識に上げられたスピードに驚き、賢一はバランスを崩して自転車から落ちそうになった。
家に帰ってくると、ガレージからバン!と車のドアが閉まる音が聞こえた。安畑から携帯に連絡があり、父が勤務先から帰ってきたのだ。賢一と賢二を見つけると、父は駆け寄って二人を抱きしめた。
「賢一!賢二…!」
背中に回された、大きな手。その温かさと力強さに少しの間だけ浸った後、賢二は自らその手を解いた。今はもう、わかっているから。
「今は、俺よりも賢一を」
そういって賢二は鍵を開け家に入っていった。
二人は改めて、今日のこと、それに至るまでの経緯を父に話した。話を聞いた父は、そうだったのかと言い複雑な表情を見せた。仕事に感けて二人のことに目を向けてやれていなかったことを悔やみ、気づいてやれなくてすまなかったと謝った。
夕食をとって片付けをした後、父の部屋で父を真ん中にし、三人は川の字になって眠った。
最初のコメントを投稿しよう!