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朝の六時半過ぎ。賢二が目を覚まし後ろを見ると、父の姿はもうなかった。勤務先が少し遠いところにあるため、いつも六時頃家を出ているのだ。賢一は向こうをむいて寝ていた。
身支度を整えると、賢二は台所でオムレツを作って皿に盛り、朝食をとろうとした。すると奥からドアの開く音が聞こえ、バタバタと足音を立てて賢一が台所に来た。
「賢二っ、何先にメシ食ってんのっ!しかも俺の好きなオムレツッ!」
「えっ、賢一、今日学校行くの?」
「…行くよ」
「…そうか。じゃあ早く着替えて顔洗ってこい」
うんと返事をして、賢一は身支度をしに自分の部屋に行った。賢二は賢一の朝食を用意する。昨日のことがあり、今日は学校を休むと思っていたが、一人で家にいさせるよりはいいか、と思った。
身支度を終えた賢一と賢二は向かい合って座り、改めて朝食をとり始めた。久しぶりに作ったオムレツだ
ったが、賢一が美味いと言って食べたので賢二はほっとして小さく笑った。
暫くこれといった会話もなく食べていると、賢二が箸を止め、賢一に言った。
「…賢一。俺、みんなに謝ろうと思う」
「えっ?」
「今までのこと。クラスやクラブのみんなに迷惑をかけてきたから…ちゃんと事情を話して、謝る。許してくれるか、わからないけど…」
「賢二」
「それで、さ。その時…」
「うん」
「話をする時…一緒にいてくれるか」
遠慮がちにいう賢二に、賢一は笑顔で言った。
「当ったり前だろー!俺も一緒に謝るよ」
「ありがとう」
「あ、もうこんな時間だ。早く食わねぇと!」
残りのオムレツとごはんをかき込むと、マフラーを巻きカバンを背負って、二人は家を出た。
学校への道を、並んで歩く。そんなことは小学校に上がった時以来だ。近くを歩いている同級生やクラスメイト達は、初めての光景にとても驚いた。しかも何だかすげー楽しそうだぞ、と。
正門を通り下駄箱まで来ると、いつものように小倉が生徒達の様子を見ていた。賢一のおはよっ、小倉ち
ゃん!の声に、小倉は安心した様子でおはよう、賢一君!と挨拶を返した。賢二とも挨拶を交わす。
小倉はあ、という顔をして 二人に少し顔を近づけると、小声で “安畑先生が会議室に来るようにって言ってたわよ”といった。わかった、と言うと二人は靴を履き替え、会議室に向かった。
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