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放課後、クラブ。
パート練習(楽器ごとの練習)が終わり、教室で練習していた部員達は音楽室に戻ってきた。全員揃ったところで、吹奏楽部顧問の錦野が部員達に言った。
「間もなく行う三年生の引退公演の前に、新部長、副部長を決めようと思う。二年生の中で、立候補する者はいるか」
二年生部員は顔を見合わせるが、立候補する者はいない。
「いないようなら、こちらから指名する。新部長は…賢一」
「おおっ、賢一!」
「よっ、賢一部長―!」
部員達は、賢一の部長就任を歓迎した。明るく元気に、皆を引っ張っていってくれると思ったからだ。だが賢一はさっと手を挙げると、目をキラキラ輝かせながら錦野にいった。
「先生!部長は賢二がやった方がいいと思います!」
それを聞いた部員達は驚いた。たちまちどよめきが起こった。賢一気は確かかと…賢二は、賢一とは真逆で、いつも難しい顔をしていて人と関わろうとしない。醸し出す雰囲気も重く、近寄り難かった。
『はぁ!?あいつ何言って…』
賢二も、予想外の言葉に驚いた。だが賢一は満面の笑みで続けた。
「賢二は責任感あるし、部のために一生懸命動いてくれると思います!俺が副部長をやりますから。な、賢二♪…」
「断る!」
賢二ははっきりと拒否した。部員達もよし!と思いながら錦野を見る。錦野は腕を組んで少しの間考えると、意見を述べた。
「確かに、賢二は練習や楽器の手入れなども丁寧にしているし、いろんなことがきっちりしている。部のことも、上手くまとめてくれるかもしれないな。じゃあ部長は賢二、副部長は賢一ってことでいいな」
『えぇ――…』
まさかの錦野の言葉に、部員達は絶望した。そんな、先生までと…だが錦野の表情を見ると、発言を撤回させられる雰囲気ではなかった。部員達は賢二が部長になるのは嫌だったが、賢一が副部長ならと、渋々それを了承した。
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