こういうことだったのかな。

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年が明けて初めてのクラブを終え、賢一と賢二は家に帰ってきた。前を歩いていた賢二はポストから鍵を取り出すとドアを開け、さっさと中に入っていった。一度閉まったドアを開け、賢一も中に入った。 賢二は台所に行き、弁当箱と水筒を、水を張った洗い桶に浸ける。そして、晩メシまでゆっくり休んでろという賢一の言葉を無視し、自分の部屋に入っていった。バタンと戸が閉まるのを見てふぅ、と息を吐くと、賢一も弁当箱と水筒を水に浸け、泡立てたスポンジで洗った。 夜七時半。冬休みの宿題が一区切りついた賢一は、部屋を出て台所に行き、夕食の準備を始めた。今夜のおかずは餃子。フライパンをコンロに置いて火を点け、餃子を焼いた。 「よし、綺麗に焼けた!」 いい具合に焦げ目のついた餃子を二つの皿に分けて盛りつけると、おーい賢二、メシできたぞ――!と大きな声で呼んだ。だがドアは開かず、返事もない。やっぱり来ねぇ、か…と、賢一は片方の皿にラップをかけ、茶碗にごはんをよそうと一人で夕食をとった。 『一人で食うと、やっぱ美味くねぇな…』 ――― チチチ、チュンチュン、チュピチュピ。 「寝坊したあっ!!」 賢一はベッドから飛び降りると、急いで顔を洗って制服に着替えた。寝ている間に、目覚まし時計の電池が切れてしまったのだ。台所に行くと、テーブルに餃子の皿が置いてあった。餃子は残っていない。 『メシちゃんと食ったみたいだな…よかった』 賢一はマフラーを首に巻き、カバンを背負って家を出ようとしたが、今日がゴミ収集日であることを思い出した。忘れるところだったと、ゴミの入った袋を結ぼうとした時、賢一は袋の中にある物を見つけた。 ――― 餃子。 「……」 賢一は複雑な気持ちになったがそのまま袋を結び、袋を持って家を出た。
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