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「お邪魔します……」
外の健康的に明るい世界とは真逆の薄暗く怪しい世界に真弓由美は不気味さを感じているらしかった。
「お座り下さい」
私はいつもと違う低い声で喋った。
「前世が知りたいそうですね」
「はい」
「何故ですか?」
「はい……。私昔から同じ夢ばかり見るんです。もしかしたら前世なのかなぁと思って」
「どんな夢ですか?」
「はい……」
真弓由美は昔の韓国王朝の側室として王宮で暮していた。側室なので王様に全てを捧げなくてはいけない身だったが、いつも警備してくれていた護衛の武官と恋に落ちてしまった。しかしその恋は叶うことなく終わってしまう。
「韓流ドラマの見過ぎかも知れないんですけど、何故か凄く切なくて毎朝起きたら涙でグチャグチャなんです」
真弓由美は恥ずかしそうに言った。
「それは貴女の前世です。その通り、叶う事無く終わりました」
「やっぱり」
「だから貴女はその武官だった彼を探しているのですか?」
「え? ……まあ、そうかも知れません。今度はちゃんと付き合いたいかなぁって……」
きっと真弓由美は夢が前世である事を確認したかっただけなのかも知れない。前世では王宮で王様のご寵愛を受けきらびやかに暮していたと自慢して、みんなからチヤホヤされたかっただけなのかも知れない。
ついでに言うと叶わなかった恋のお相手なんてどうでも良く、ならばもう一度王様と出会って今度は正室に、と目論んでいる。
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