ピアノ弾くモノ

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 しばらく定点カメラでピアノを録り続ける。しかし当然何も起こらない。だってここには何もいない。  しかし番組の冒頭部、大事な掴みの部分である。 「そこの君、憑依されてくれ」 「はあ?」  突然指名され、呆れる私。しかし放送部部長は大真面目だった。 「番組の導入のために最初に何か起きなくては始まらない。憑依されたフリをしてちょっと倒れてみてくれ」 「え〜」  やらせもいいところじゃないか。そんなモノに加担したくはない。仕方ない。奥の手を出すか……。  私は猫を飼っている。と言ってもペットでは無い。所謂眷属である。私の奥の手は猫の手だった。 (タマ、ピアノ弾いておいで)  私の命令は絶対だ。タマはサッと私の元から飛び出しピアノの前に座った。そしてなんと、『子犬のワルツ』を弾き始めた。『猫踏んじゃった』は嫌いらしい。 「おー! ピアノが勝手に鳴り出した! それも上手い!」  暗闇の中誰もいないのにひとりでに鳴り出すピアノ。 「真弓さん、レポート!」  放送部部長に急かされ真弓由美はピアノの前に立ちマイク片手にレポートを始めた。
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