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「私無理! 立てない! 栗本1人で見てきて!」
前世の悪影響で何でも人に命令する。その癖は直してもらいたい。が腰が抜けたのなら仕方が無い。
なんとなく私には分かっていた。でもカメラに収めない事にはトイレから出られそうに無い。仕方無くカメラを抱え、真ん中の個室のドアを開けた。
「…………」
中の人といきなり目が合ってしまった。挨拶した方が良いのかどうか迷っていると「何かいたの!?」「ねえ、どうなの?」と真弓由美が後ろから騒ぎ立てる。仕方ないので中の人とはテレパシーで会話をする事にした。
(お騒がせしてしまってすみません)
(あら、声を掛けてくれるなんて珍しい。こんばんは)
(こんばんは……)
中の人は黒髪ストレートのまだあどけない顔のメガネ女子だった。もう生きてはいないけど。
霊視するまでも無く、女生徒の思いはひしひしと伝わって来ていた。トイレに入った時から。
女生徒はイジメを受けていた。教室では無視されたりノートや机に落書きされたりしていた。
でもそんな事はどうでも良かった。小さい頃から1人で本を読むのが好きだったから。そんな自分だからいじめられたという事も分かっていた。
でもお昼の時だけは寂しかった。他の生徒たちは友達とワイワイ楽しそうに食事をしていた。それを見ながら1人でモソモソと食べる昼食は美味しく無かった。
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