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いつからか女生徒はトイレで昼食を摂るようになった。1人でいてもいい空間だ。トイレの個室でゆっくりと本を読みながら食事をした。その時間がある事で教室での嫌な思いも忘れられた。
そのうちに女生徒は病気になってしまった。心の病では無く、普通に体の病気だ。若かったので進行も早くあっという間に亡くなってしまった。
(やっぱり食事する所だから奇麗にしておきたくて、しょっちゅう掃除してるのよ)
トイレに誰もいないのに水が流れるのは彼女が頻繁に掃除をしているためだった。
(ここが私の1番心が休まる所なの。1番居心地のいい場所なの)
女生徒は笑顔でそう言った。
どうやら女生徒は自分が死んでいる事に気付いていないらしい。誰からも声を掛けられないのは無視されているのだと思っているらしい。
(家は? 家にも貴女のご飯用意してあるでしょう)
(お母さん躾に厳しくてね。食べ方とか箸の持ち方とか、食べてる間中監視してるの。だから食べた気がしないの。お昼が1番ゆっくり食べられる)
それで家にも帰らずにここに居座っているのか。
「ちょっと、何突っ立ってんのよ! 何かいたの?」
真弓由美がまた騒ぎ出した。
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