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「う〜ん、ねえ、真弓由美は親とご飯食べるのってどう? 躾とかうるさくて嫌だったりする?」
真弓由美の家は両親とも堅そうなので躾には厳しいのではないかと思い聞いてみた。
「はぁ? 何急に。うちなんて両親仕事忙しくて家族揃ってご飯食べるなんて1年に1回か2回よ」
「そうなの?」
「だから躾なんて何も教わってないし。箸の持ち方だって知らないし」
「へー。年に1回とか2回っていつ?」
「私の誕生日と両親の結婚記念日かな。あ、あと私が病気の時には早く帰って来てくれたかな」
(病気……、病院……)
女生徒は何か思い出したようだった。
(そう言えば、私が入院してた時、お母さんは優しく食べさせてくれたっけ。口からこぼしても怒らなかった。そっと拭いてくれた。あの時のお母さんは優しかったなぁ)
お、少し思い出し始めたか。
(躾に厳しいのは将来貴女が恥をかかないためだよ。ほら見て。あの子は高校生なのに箸もちゃんと持てないんだって。日本人なのに恥ずかしいよね〜)
本当の事だから悪口じゃ無い。
(そうなんですか。それは可哀想に)
(それに両親が忙しくて一緒にご飯も食べないんだって)
(まあ可哀想に)
(うるさく言ってくれる親がいるなんて幸せじゃないの。上手に食べられる所見せて親をギャフンと言わせてみれば?)
(ギャフン? 何ですか、それ)
え、ギャフン知らない? 我が家では標準語なんだけど……。まあ我が家の食卓は昭和大正明治江戸時代なんかの御先祖様も一緒につく事があるから、私は古臭い言葉を結構知っていた。
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