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そんな私たちに「柚子く〜ん」と黄色い声を上げる集団が近付いて来た。
「ヤバ、行くよ!」
「え?」
柚子くんは私の手を勝手に握り走り出した。後ろでは柚子くんコールがひときわ大きくなっていた。
このシチュエーション、以前三郎に手を取られ走ったなあ。あの時はコイツ何すんねんと思ったが、何しろ今私の手を握っているのはあの「柚子くん」だ。動揺しない方がおかしい。
履き慣れないパンプスとタイトのミニスカートで走るのは結構大変だった。何処へ連れて行かれるのだろう。このまま愛の逃避行……な訳はない。きっと私と話がしたいんだ。この鳳凰の事について。
何やら講堂のような建物の裏側まで来て、やっと柚子くんは手を離してくれた。大分走ったので私は息が切れて呼吸が苦しかった。でも柚子くんはケロッとした顔で話し始めた。
「ごめん、疲れた?」
「疲れたよ」
「ふうん。まだ若いのに運動不足?」
「はあ?」
こいつ、顔のわりに失礼な奴だ。
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