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初仕事
次の日の放課後、怪しいとは思いながらも部室へ行った。”副部長”になったという責任感と、部長1人では可哀想だという同情心からだった。
「あ、栗本さん、おはよう」
「おはよう?」
「ああ、部の挨拶なんだ」
ここは芸能事務所か? いやそれよりもこの薄暗い部屋でおはようは無いんじゃないのか。
2人っきりでやる事も無いので、お互いの自己紹介をしあった。
部長は3年生で将来は書道の道に行きたいそうだ。両親ともに書道家で、自身も幼い頃から筆を握ってきた。クレヨンよりも先に筆でお絵かきをしていたそうだ。
「筆を握って真っ白い半紙に向かう瞬間、ほぼ瞑想状態になるんだ。そんな事を小さい頃からやってきたから霊感が付いちゃったのかも知れない」
そんな事があるのだろうか。霊感なんて遺伝だと思っていた。
「両親も霊感があるみたいなんだ」
やっぱり遺伝だ。
話を聞いていると、前部長はとても霊感の強い人だったそうで、オーラとか前世を視られたので女子部員がたくさんいたのだそうだ。その部長が卒業し、現桃林部長に代替わりした途端、部員は辞めていったそうだ。理由は桃林にはオーラも前世も視えないから。
本当に可愛そうな部長だ。
「去年も新入部員が入らなくて、このまま今年も入らなかったら廃部になるところだった。栗本さんが入ってくれて良かった」
そんな部長の足元に獣が憑いているのに気が付いた。
「えっと、部長。夕べは良く眠れましたか?」
「うん。座敷わらしだと分かったら安心して良く眠れた。夜中に布団をモゾモゾされて1回起きたけど、座敷わらしなら可愛いやと思って安心してた。そしたら向こうも好意を分かってくれたのか布団の中に入って来たんだ。で、僕は頭を撫でてあげたら嬉しかったのか僕にくっついてきたんだ。暖かかったからすぐに寝ちゃった」
部長、それは座敷わらしでは無くて獣です。でも、本当に部長を慕っている。何だろうと良く視てみた。
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