みためじゃない

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 授業中、秋島俊太郎はちらりと窓際の席の彼女に視線を送る。  彼女ーー月野薫は机に教科書を立てて壁を作り、教師から隠れるようにまどろんでいた。  教師は薫を一瞥するも、注意をすることなく授業を続行した。俊太郎以外のクラスメイトも、またか、といった様子で気にもとめない。  俊太郎だけが薫を見つめていた。  人工的な明るい金色の長髪は、根本から黒い地毛が伸び始めているせいでカラメルプリンを思わせる。化粧も肌が白く見えるほど濃く施されており、美容という言葉からは縁遠い。  薫はこの進学校では珍しい不良だ。授業中はいつも寝ているし、見た目に関する校則もいくつか破っている。  派手な見た目と居眠りのせいで、夜な夜な大人の男を相手にしている、という噂まで流れてしまっている。  いったいなにがあったんだろうか、と俊太郎は思う。  俊太郎はこの高校に入学する前に引っ越してきた。  初めての土地ではない。幼い頃まではここに住んでいた。親の都合で数年ほど離れていただけだ。  その幼い頃、薫はもっと普通の……俊太郎からすると普通以上に魅力的な女の子だったはずなのだ。  快活で活発で、ともかく明るい子だったと思う。  体型のせいでからかわれていた俊太郎を、いつも励ましてくれていた。 『太ってるくらいなんてことないよ。人は見た目じゃないって、お母さんが言ってたもん』  母親の受け売りであろう薫の言葉は、俊太郎の価値観に大きく影響している。からかいに屈せずにいられたのも、彼女のおかげなのだ。  だからこそ、俊太郎は同じクラスに薫がいたことを喜んだ。見た目はすっかり不良になってしまったが、彼にはそんなこと関係ない。  人は見た目じゃない。その言葉は俊太郎の胸に刻み込まれている。  しかし見た目だけでなく、薫はその性格も大きく変わっているようだった。  クラスメイトに話しかけられても、返事は冷たく短いものばかりだった。 「私のことは放っておいてくれる?」  しつこく話を続けようとすれば、はっきりと拒絶の言葉を口にした。  俊太郎の記憶にある明るい彼女とは違い、今の薫はその真逆の態度をとっている。  とはいえ、それで薫に関わることを止めたわけではない。  むしろそこまで変わってしまう何かがあるなら、薫の助けになりたいとすら思っていた。 「か、薫ちゃん。僕のこと覚えてないかな?」  同じクラスになって間もない頃、クラスメイトは薫との付き合いを諦める中で、俊太郎は意を決して彼女に声をかけた。 「お前のことなんて知らない」  俊太郎を横目で確認すると、薫は一言そう告げて窓の外へ視線を向けてしまった。  それ以降、俊太郎は薫に話しかけれていない。  こうして授業中や休み時間に彼女を盗み見てばかりになった。  覚えていないと言われたことがショックで、もう一度そう言われたら立ち直れないのではないか、そう思ってしまった。  眠気に襲われている薫の姿は、普段の剣呑な態度と違い健やかで年相応のものに見える。  その姿を見ていると、俊太郎は薫が見た目通りの不良になったとは到底思えなかった。 「秋島ーー秋島、聞いているか?」 「は、はい!?」  薫に意識をとられたせいで、教師から注意を受ける。教室内にわずかな笑いが生まれた。  しかし薫はやはり、居眠りを続けているのだった。    結局、俊太郎は今日も薫に話しかけることなく帰宅した。  晩御飯を家族と食べ、風呂に入って汗を流し、明日提出予定の宿題を自室で始める。  その途中でシャーペンの芯が切れた。時計を見ると、すでに二十二時を回っている。それでも宿題をしないわけにはいかないので、外出着に着替えてから家を出た。  家から近くのコンビニまで、自転車でも十五分ほどかかる。俊太郎の自宅は駅などの栄えている地区から少し離れた場所にあった。近所が静かで気に入っているが、この時ばかりは不便に思う。  電灯の少ない道を進み、ようやくコンビニが見えてくる。ここまで来ると駅が近いこともあって、道中とは違い明かりもあちらこちらに見かけるようになった。  そして明かりが増えたおかげもあって、俊太郎は一人で歩いている薫を見つけることができた。  声をかけようかと思ったが、薫の様子を見ていったんその場に止まる。彼女は辺りを見回しながら、何かを探すように駅前へ向かっていた。  俊太郎の頭にとある噂が思い浮かぶ。  月野薫は、夜な夜な大人の男を相手にしている。  薄暗い中目をこらしてみると、薫は見慣れた制服ではなく、青いパーカーワンピースを一枚着ているだけのように見える。  その下にはもしかしたら、直に下着を着ているのだろうか。  よこしまな妄想とそれを誰に見せるのかという不安がむくむくと膨らんでいく。  俊太郎は自転車を降りると、邪魔にならないよう道の端へ止めた。そして薫から距離をとったまま、彼女のあとを追い始めた。  薫を尾行して数分、俊太郎の進む道はすっかり非日常のものになっていた。  ピカピカと色とりどりに光る看板が置かれ、法被を着た居酒屋の客引きがぎらぎらと目を輝かしている。  夜の駅前というのは想像以上にきらびやかで人通りが多い。  アルコールの苦い香りと、化粧の甘ったるい匂いが混じって鼻がおかしくなりそうだ。  それでも薫を見失わないよう、目をこらしながら俊太郎は歩き続ける。彼女はこの眩しすぎる夜の中で、相変わらず何かを探しているようだった。  もうすぐ歓楽街から出てしまうというところで、薫が足を止めた。それにならい、俊太郎も立ち止まる。 「なに突っ立ってんだよ。邪魔だ!」 「す、すみません!」  背後から怒鳴られ、俊太郎は反射的に謝りながら飛び退いた。声の主は不機嫌そうに通りすぎていく。  俊太郎が視線を戻すと、そこに薫はいなかった。  消えた。今の一瞬の間に。  人波を避けながら、薫の居た位置に慌てて走る。そこはちょうど歓楽街の突き当たりとなっており、目の前には侵入防止のフェンスを挟んで線路が通っていた。  左右に道が別れており、そのどちらも線路沿いの暗い道が続いている。今まで進んできた道とは違い、電灯すら数が少ないように思う。  薫はどちらに向かったのだろう。そもそも、こんな人気の少ない方に何を探しに行ってるんだ。  薫の尾行を始めてから時間も経っている。夜遊びの経験などない俊太郎にとって、深夜徘徊は未知の経験だった。  つい先程怒鳴られた声が頭の中に響く。  もしもこのまま薫を探し続けて、たちの悪い大人に絡まれたら。 「怪我とか、しちゃうかもなぁ……」  情けない想像が口につく。しかしすぐに思い直した。  怪我をするかもしれない場所に薫がいる。なら行かない理由はない。  俊太郎は自らを鼓舞するように駆け出した。特に根拠もなく右へ進む。  根拠を探して考え込むと、自宅の方へ足が向かってしまいそうな気がした。  規則的な足音が辺りに響く。歓楽街を離れると、聞こえなかった音がはっきりと耳につく。  自分の吐息、コンクリートを蹴る音、服の衣擦れ、近くでジジジと鳴る自動販売機。  歓楽街とはまた違う、俊太郎の知らない世界だ。  五分ほど走って、俊太郎は薫を見つけれなかった。  昼にしかやっていない店の裏、駅近くの立地のいいアパート、無人の駐車場。辺りに人の影は見当たらない。  立ち往生して、俊太郎はなんとなく笑ってしまいたくなった。  薫を見つけたときは運命めいたものを感じた。今夜、なにかが起こると信じていた。しかし、そんなにうまくいくものではなかった。  帰ろう。そして、明日改めて薫に聞いてみよう。  昨日はなにをしていたのかと。 「ーー俊ちゃん!」  俊太郎がその声に気づく前に、それは動いていた。  無人の駐車場の隅、そこにできた影に潜んでいたものが飛翔する。鋭利な鎌の如く体を変形させて、俊太郎に飛びかかる。  その致命的な一撃が俊太郎に届く前に、それは真っ二つになって地面に転がった。  道路に赤黒い染みが広がる。それは動かなくなった肉片から流れ出ていた。  呆然とする俊太郎の前に、薫が立っていた。彼女は青いパーカードレスに運動靴と、動きやすそうな姿だった。 「なんでこんなところにいるの? 早くどっかに逃げて!」  薫の声音は学校で聞くものとは違う、冷淡さの欠片もない感情的なものだ。  その声が自分を俊ちゃんと呼んだことに気づき、俊太郎の頭に、場違いな感想が浮かぶ。  懐かしい。そういえば、昔はそう呼ばれていた。 「……あ、くそっ! やっぱり逃げないで。そこから動かないで!」  薫が苦悩と焦燥に顔を歪ませる。そこかしこの影から、じわりじわりとにじみ出るように、なにかが這い出ていた。  俊太郎にもはっきりと見える。見えるが、それがなにかはわからない。ただ黒い不定形のもので、それが薫と敵対していることだけわかった。  状況が理解できずにうろたえている俊太郎へ、薫が一瞬だけ流し目を送る。  次の瞬間、薫の体が崩れた。通していた腕が消え、彼女の来ていた衣服がその場に落ちる。  薫が立っていた場所には、黒い棒にいくつもの触手を生やす、植物を思わせるものがあった。  触手が脈動しながら周囲を凪ぎ払う。自由自在に伸び縮むそてれは、影に潜んでいるものを狙って引き裂いていく。  これは、なんだろう。悪い夢か、それとも夜遊びした罰か。  俊太郎の視界が歪む。頭が熱くて仕方なかった。足元から感覚がなくなり、ぐらりと体が揺れた。  傾いた視界に、俊敏に遅いくる黒いものが入った。しかしそれは触手に弾き返され、視界の外へ消える。  起こりすぎた出来事を処理できず、俊太郎の脳が限界を迎える。最後に理解できたことは、薫が自分を守ってくれた事実だけだった。  俊太郎が目覚めたのは、朝焼けの眩しさがまぶた越しに感じられたからだった。  起きると同時に伸びをする。体の節々が痛む。どれだけ伸ばしても、肩や腰のあたりの筋肉が固く思えた。特に尻のあたりが痛いし固い。  自分の体勢を確認すると、フェンスに背中を預けて道路に座り込み、足を投げ出していた。道理で体中が痛いわけである。  隣から人の息づかいを感じ、俊太郎がそちらを向く。制服姿の薫が膝を曲げて覗き込んでいた。 「おはよう?」  寝ぼけた頭のせいで、挨拶の言葉しか浮かばない。  挨拶は返ってこず、薫は無言で歩き去って行った。  ポケットにあるスマホで時間を確認する。まだ朝の六時を過ぎたところだった。  今から家に帰れば、ぎりぎり遅刻はせずに学校に着くだろう。  そう思い、俊太郎は痛む体に鞭をうって立ち上がる。そして、自宅に向かい歩き始めた。  俊太郎が宿題を終えていないことに気づくのは、家を出てからのことだった。    教室はいつも通りだった。クラスメイトは真面目に机に着き、薫は机に突っ伏している。  授業を受けながら、俊太郎は考える。  あれは夢だったのだろうか。だとして、いつから、どこからが夢だろう。  家に帰ってから、両親に心配したと怒られた。話によると昨夜コンビニに出掛けると言ってから帰ってこなかったらしい。  ならコンビニに行く途中、薫を見かけたのは現実だろう。起きた場所が線路沿いの道なのだから、彼女を追ってそこまで来たことも間違いない。  俊太郎が薫を見る。彼女はいつもと変わらず、すやすやと静かな寝息をたてていた。  いつもの彼女だ。黒い植物のような姿じゃない。  なによりも重要なのは、あの時の薫が自分を俊ちゃんと呼んでくれたことだ。  薫は俊太郎のことを覚えている。  あれが夢でないなら、そういうことになる。  俊太郎の頬が緩む。すぐに自覚して、教科書を立てて顔を隠した。 「か、薫ちゃん! ちょっといい?」  放課後、すぐに帰ろうとする薫を俊太郎は引き留めた。  しかし眉を寄せて不機嫌そうに一睨みすると、薫はそっぽを向いて教室を出ていった。  今までだったら諦めていたかもしれない。だが俊太郎は薫が自分のことを覚えていると信じていた。  早足で下駄箱に向かう薫を追いかけ、俊太郎は彼女の横に並んで歩く。 「今朝はありがとう、きっと様子を見に来てくれたんだよね」  薫からの返事はない。下駄箱に着くと、彼女はそのまま靴を履き替えた。俊太郎も靴を替えてあとを追う。 「それから、昨日のことも。よくわかんないけど、ありがとう」  校門を出て歩道を歩く。薫が進む道は俊太郎の自宅とは方向が違う。それでも彼は彼女のあとに続いた。 「なんていうか、びっくりしたよ! なんなの、あの黒っぽいやつって?」  下校時間だけあって、俊太郎の他にも下校中の生徒がちらほらといる。彼らは一方的に話しかけて無視される俊太郎に好奇の視線を送っていた。 「なにか手伝えるかもしれないし、できれば教えてほしいなって……」 「あのさ」  薫が立ち止まる。俊太郎が一瞬、瞳を輝かした。 「なに!?」 「しつこい。きもい。関わんないで」  ぽかんとする俊太郎を置いて、薫が歩きだす。距離が離れる前に、俊太郎の手が彼女の肩をとらえた。  予想外の行為だったのか、薫が目を見開きながら振り返る。  俊太郎は驚く薫をまっすぐ見つめていた。 「な、なんでそんな風にするの?」 「そんな風……」  漏れでたように薫が聞き返す。 「不良みたいな格好して、そっけなくして……なんで僕のこと忘れたふりするの?」  つっかえ、途切れ、声に張りがあるわけでもない。それでもその言葉は、薫に迫力を感じさせた。 「ふりなんかじゃない。私はお前なんか知らない」 「俊ちゃんって呼んでくれたでしょ。昨日確かに言ってた!」 「なんのことかわかんない。昨日はお前となんか話してない!」 「なら昨日の夜、薫ちゃんはなにをしてたの!?」 「それはーー」  迫力につられて大きくなっていた声が途端におさまる。薫は俊太郎の手を振り払うと、背を向けて走り出した。  俊太郎もその背を追って駆け出す。制服姿の薫は、見た目にそぐわないスピードで走り続ける。  そういえば昔から、彼女は走るのが早かった。  それでも昔とは違い、体格にも大きな差がある。俊太郎が薫に追い付くのにそれほどの時間はかからなかった。  二人が息を切らして立ち止まったのは、住宅街の中にある小さな公園の前だった。  薫がそれに気づくと、くしゃりと顔を歪める。  日が落ち始める時間のせいか公園やその周りにも人はいない。オレンジ色に照らされた二人の息づかいばかりが辺りに響いていた。 「俊ちゃんには、見られたくなかった……」  ぽつりと、薫が呟く。肩で息をしながら俊太郎が顔を上げる。 「あんな、あんな化け物の姿……見られたくなかったのに……!」  振りだした雨のごとく、薫の語気が強まっていく。 「なんであんなところにいたの!? そのせいで、俊ちゃんが危なくて、助けなきゃって!」  俊太郎の返事も待たず、薫の吐露が続く。それには塞き止めていた水が流れるような、猛烈な勢いがあった。 「怖かったよね? きもかったよね? でも仕方ないじゃんか! 俊ちゃんが襲われそうになってたんだから!」  薫の目から涙が流れる。ぽろりぽろりと地面に落ちて、コンクリートを湿らせた。 「私が、いっぱい変わっちゃったんだから……俊ちゃんの覚えてる私じゃないの……」 「変わってないよ」 「変わったの! 体もなにもかも、全部変わったの! 昔とは違うんだよ!」 「薫ちゃんは、なにも変わってない」  俊太郎の頭に昨日の出来事が浮かび上がる。  危険な体験だったはずなのに、浮かんでくる感情は嬉しいとか気恥ずかしいばかりだった。  不定形の黒いものも、薫の奇妙な姿も俊太郎の関心を引かなかった。  自分のことを俊ちゃんと呼び、昔のように自分を守ってくれた。 「昔のままだよ。だから助けたい、力になりたいんだ」  薫が一瞬、なにかを言いかけたが止める。代わりに彼女の体が黒く染まった。目や髪の毛の区別がつかなくなり、それは凹凸のある滑らかなオブジェのように見えた。  引っ掛かり落ちずにすんだ制服だけが、それが彼女であると証明していた。 「ーー本当に、変わってない?」  それから発せられたと思われる声は、確かに薫のものだった。俊太郎はそれに近づいていく。  怖くない。だってこれは彼女だから。 「この姿だと、どこがどこなんだろ」 「なんのこと?」 「耳とか、鼻とか」 「……わかんない。聞こえるし、匂うし」 「じゃあ、うん、し、失礼して……」  俊太郎が薫に唇をつけた。すぐに離して、彼女の反応を待つ。  黒いオブジェは少しの間動かずいると、粘土のように流動して人の体を作った。その体に絵の具を垂らしたかのごとく、肌色が広がっていく。  俊太郎がまばたきをすると、そこには制服を着崩し、顔を熱っぽく赤くした、扇情的な姿の薫が立っていた。 「なにすんだ、このバカー!」  静かな住宅街に、乙女の声が鳴り響いた。 「信じらんない、信じらんない、信じらんない!」 「ご、ごめん……」 「なんでキスすんの!? しかもあの姿に! 俊ちゃんおかしいよ!」 「あれくらいしなきゃって……」 「あー、もう、俊ちゃん変わったよ……昔は泣いてばっかりのいくじなしだったのに……」  俊太郎と薫は公園に入り、備え付けてあるベンチに並んで座っていた。  薫は制服を着直し、すっかり健全な姿に戻っている。 「薫ちゃんは変わらないね。明るくて、優しいままだ」 「……俊ちゃんは、怖くなかったの? 私、あんなのなのに」 「それってどっちのこと?」 「え? あー、不良とあれの両方!」 「薫ちゃんだと思うと、両方とも全然だね」  薫は口をへの字にして俊太郎を見つめる。 「俊ちゃん、変!」 「人は見た目じゃないって、薫ちゃんが言ってくれたんだよ」 「限度があるでしょ、限度がさー……」 「これは僕の信条でもあるから」 「重たいなー」と、薫が笑った。  俊太郎が「薫ちゃん」と呼ぶと、薫が笑みを浮かべたまま彼の方を向く。 「明日からも、よろしくね」 「なにそれ? ……よろしく、俊ちゃん」  薫になにがあったのかとか、どうして不良の真似をしているのかとか、俊太郎には聞きたいことがあった。  しかし今ばかりはどうでもよかった。  久しぶりに幼馴染みと話して、彼女が変わっていないことがわかった。ただそれだけでよかった。  好きだった彼女のままなら、どんなことがあっても力になりたいと思える。  俊太郎が薫の方を見る。  夕焼けに照らされた彼女の笑みは、昔と何一つ変わっていなかった。  
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