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大した遺産も継いておらず、親族さえ定かでなかった私に、当然引き取り手はいなかった。
児童養護施設預かりとなったけど、人見知りする性質じゃなかったし、施設の人達は大人も子供も、いい人達ばかりで、それなりに楽しく過ごせた。
中学を卒業した後は、就職するつもりだったけど、中卒じゃ満足な働き口もなく、施設の人達(主に大人達)も『そんなに気を使わなくていい』と言ってくれて、何とか公立の高校に通わせてくれた。
私の三歳上に、同じ高校の卒業生(♀)がいて、制服やら鞄やら、その他諸々を譲ってもらえた。
なので、バイトしながら、高校に通うことにした。その合間に、独り暮らしの為の格安好物件を探す日々。
高校卒業するまではともかくとしても、卒業後まで、施設に頼るわけにはいかない。もう充分、頼りすぎるほど、頼ってしまったのだから。
-そんなこんなで無事、高校卒業後。やっぱりバイトしながら、独り暮らししつつ、大学に通う日々。
現在は、大卒の肩書きぐらいなければ、就職も難しい。普通の企業は勿論、出版社とかでも、最低『短大卒』の肩書きが必要だったから。
「出来ましたよ。………お嬢様?どうかなさいましたか?」
色々と思い出していた私は着替えが終わったことにも気付いていなかったらしく、訝しんだリーネに問い掛けられた。
「あ、何でもないの。今日の朝食は何かなって。」
慌てて出た言い訳は、そんな言葉だった。けれど、それはそれほど不自然なものではなかったらしかった。
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