さしあたって、することは?

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 正直な話。婚約者は別にどうでもよかった。前世は庶民であったが、身分制度がある世では『政略結婚』などザラにあることは理解している。  日本だって、江戸時代までは、多々ある話だったのだろうし………。まぁ、利権や財政が理由な場合もあっただろうが。 「ねえ、リーネ。お父様とお母様………それから、お兄様は?」 「皆様、もう食堂にいらっしゃると思います。あ、でも。レオナード様は今頃、ロイに叩き起こされて、寝惚けながら身支度整えられてる頃かも知れません。」  その光景が容易に思い浮かぶらしいリーネは『ふふふっ』と笑っていた。どうやら、兄は朝に弱いらしい。  言い方は悪いが、外面は良く『礼儀正しく、利発な伯爵子息』と言う評判で通っている兄。  因みに。ロイと言うのは、兄が七歳の頃から就くようになった専属侍従の名である。レオナードより二歳上で、まるで兄弟のように仲が良い。  現代社会(現実世界)での世間一般の兄弟がどうか、と言うのは置いておくとして。歳の近い兄弟と言うのは、特に比較されやすく、その評価によって、仲が険悪になることもあるけれど………。 「お嬢様も、七歳になられたら、専属侍女が就くでしょう。旦那様と奥様が方々(ほうぼう)探してらっしゃるようですよ。」 「え、もう?まだ二年も先なのに?………リーネじゃダメなの?」  現在のリーネは、ほぼティアラの専属に近かったのだけれど。まだ二十歳前後とは言え、まだ五歳のティアラの専属になるには年齢が上過ぎるのだ。
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