さしあたって、することは?

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-???-  頬を撫でる風に目を開けた華宵………いや、今は『ティアラ』か。ティアラが寝ていたのは、物語に出で来るような天蓋付きの………所謂、お姫様ベッドだった。  手を付いて上半身を起こす。辺りを見渡せば、リアルに『世界の豪邸訪問』的な広さの部屋だった。 -コンコン、カチャ 「まぁ、お嬢様。お目覚めでらっしゃいましたか?」  ノックの後に入ってきたのは──恐らく、メイドなのだろう──二十歳前後の妙齢の女性だった。  起きているとは思ってなかったらしく、礼儀的にノックしただけだったらしい。 「………リーネ………おはよう。今、目が覚めたところよ。」  このメイドの名前は、自然に出てきた。けれど〝ティアラとしての記憶〟は、僅か数年分しかなかった。  言葉は喋れるから、『転生』と言っても赤ん坊まで戻ってしまったわけではないらしい。  まぁ、そんな物心つく前に戻されても、困惑するだけだろう。見下ろした躰や手の大きさから見て、四、五歳ぐらい………だろうか。  この年齢なら、記憶が僅か数年分しかないのも頷ける。いくら異世界でも、四、五歳程度では就学前だろうし………。  言葉使いは気を付ければ、何とかなる。『~ですわ』とか『~ましたの』と言った口調で話せばいいんだろうし。  そんな風に考えてる間に、リーネに着替えさせられる。他人に着替えさせられるって抵抗あるんだけど、これが普通なんだろう。  十九歳までの記憶がある自分にとっては、違和感半端ない。自分で言うのも何だけど、自立心は旺盛だったし、〝自分のことは自分で〟が信条のしっかり者って言う自負があるんですが………。 -天涯孤独の身なら、それが『当然』だった  から-  あの女神の言葉からして、その事は知っていたんだろう。私の両親は駆け落ち者だったらしく、親族はおらず、いたのかどうかもわからない。  その両親が亡くなったのは、四歳の誕生日だった。家族でささやかな祝い事として、レストランに行く途中の『トンネル崩落事故』だった。  私が目が覚めたのは病院で………。酷い事故だったそうで、両親は私を庇うように覆い被さっていて、即死だったそうだ。  何もわからないまま、まともな参列者もいない葬儀は、両親の保険金を使って近所の人が執り行った形だった。
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