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二人ならブレない
「……ねえ、写真撮りましょうか」
「え、いいの?」
「まあ、正直まだ抵抗はあるわ。でも癪じゃない」
「癪?」
「こっちはこんなに想っているのに、それが伝わってないなんて」
「うっ、なぜそれを」
「あなたってわかりやすいのよ。……でもそれって、私が拘りすぎてたせいでもあるのよね。ごめんなさい」
「いや、僕も勝手に暴走して考えすぎてたから。ごめん」
「じゃあお互いさまってことにしましょ」
「ああ、じゃあこれは仲直りの一枚ってことで」
「うーん、でもあれね、カップルで自撮りって」
「あー、なんかそれっぽすぎて照れるよな」
「……もう、照れてないで早く撮ってよ。私の気が変わらないうちに」
「おっと、そりゃ大変だ。ほらいくよ、はいチーズ」
カシャ、と音がした。
「……撮れた?」
「撮れたはず」
「見せて見せて」
「ちょっと待って。……うわ」
「え? わ、ブレブレじゃない!」
「うわー焦りすぎた。てか手ブレ補正とかないのこれ。もはや誰かわからん」
「私のピース見切れてるくせに3本あるわ」
「いやそのくらいマシだろ。僕の目、6つくらいあるんだけど」
「あはは。うまくいかないわね」
「くそー、せっかく記念すべき一枚目だったのにな」
「いいじゃない、それっぽくて」
「いやどこがそれっぽいんだよ」
「全部よ。ぎゃーぎゃー騒ぎながらブレブレの写真撮って笑ったりまた騒いだりしてる、今のこの全部」
「……まあ確かに。今回は本当にそう思う」
「あ」
「あ?」
「ふふ。あなたの気持ち、少し分かった気がするわ」
「え、なにどういうこと」
「今この瞬間を閉じ込めておきたいとちょっとだけ思っちゃった」
「…………」
「写真が好きになったわけじゃないけれど、この気持ちだけは間違いなく本物ね」
「……君は本当に可愛く笑う」
「感動してる暇はないわ。時間はどんどん過ぎていくのよ」
「え、いやちょっとくらい感傷に浸っても」
「そんなの家に帰ってからでもいいでしょ。ねえ、ほら」
彼女は僕の手に重ねるようにカメラに手を添えた。
「――シャッターを切って」
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