「甘い殺害の契約」

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「誰にも束縛されぬ自由を求めるか?」  悪魔が幼い私に語りかけてくる。  鉄格子に囲まれた牢の中で悪魔を見上げる。  悪魔の姿は黒いもやに包まれていてはっきりとは見えない。  悪魔は鼻を鳴らした。 「人が人を飼うとはおぞましいものだ。我ら悪魔よりも残忍な生き物よ」 「…………あ、う」 「言葉が聞けぬか」 「あ、うー……」 「だが意味は理解できるはずだ。このまま牢に残り、仮初の安息を得るか。それとも我の手を取り、真の自由を得るか」 「うー……?」 「我の手を取れば自由を与えてやろう。その代わりに……」  悪魔は凄惨な笑みを浮かべて手を差し伸べる。 「お前の命を戴こう。これは契約だ」  契約?  良く分からない音だった。  でも、今までぶつけられた音のどの音よりも優しくて温かい音をしていた。  悪魔の手を取る。  悪魔は笑っていた。 「ならば契約成立だ。我は自由を与える代わりにお前の命を戴こう」
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