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異世界転移したらしいが、そんなことより俺は黒歴史の写真をさっさと取り返したい!
「ぎゃあああああああああああああ!」
俺は悲鳴を上げた。自室の机の中から、かつて若気の至りで撮影してしまった黒歴史以外の何物でもない超恥ずかしい写真が出てきてしまったためだ。
「いいいいいいやあああああああああ!」
俺は絶叫した。その写真が、風に飛ばされてはらーり、と窓の外へとフライハイ☆してしまったがために。
「待って待って待って待って、それ人に見られたら死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
窓の外に飛び出して、気づく。ここがマンションの四階だったということに。
あ、これ死んだわ、と思った次の瞬間。
俺と写真はビッカー!という謎の光に包まれて、森みたいなところに落下しておりました。
「ふべっ!」
なんということでしょう。都会の真ん中だったはずが、いつのまにやら鬱蒼としげる森の中でございます。
というか、周囲を角の生えた鬼みたいな奴とか、触手だらけのバケモノとか、真っ黒な狼みたいなのとかが取り囲んでいるような気がするのは気のせいか?え、これ、噂に聞く異世界転移とかいうやつ?このタイミングで?
「なんだこいつ……ん?なんだ?」
「あ!」
その角の生えた鬼みたいな奴の一匹が、俺が呆然としている間に写真を拾い上げてしまう。即座に真っ青になる俺。写真を見た鬼っぽい奴も完全に凍りついている。
数瞬遅れて事態を把握した俺、大絶叫。
「うわあああああああああやめろおおおおおおおお見るなああああああああああああああ!」
「ひいいいいい!?」
火事場の馬鹿力なのか恥力というか。俺は凄まじい速度で鬼に飛びつくと、ダイナミックに頭突きをかましていた。びよーん!と場外ホームランよろしく飛んでいく鬼――その手に、写真を持ったまま。
なんと!と血の気が引く俺氏。
「ちょ、吹っ飛ぶなら写真置いてけ!返せ!!」
「おま、何してくれたんだ俺らのリーダーに!」
「敵だ、敵だ!ぶっ殺せ!」
「うるせえ、俺はそれどころじゃねーんだ!」
どうやらあの鬼はこの集団のリーダーらしい。けど俺にはぶっちゃけそんなことどうでもいいというか、今大事なのはそんなことではない。
次々と襲ってくるモンスター達を拳一つでぶっ飛ばしながら、俺はひたすら写真と鬼が吹っ飛んでいった方向へ走る、走る、走る。
とにかくあの写真を見た鬼にはきっちりトドメを刺し、あの写真を取り返してきっちり処分しなければ。
このままでは、俺の人生が社会的に終わる!いや、なんかここ異世界っぽいし、それでも終わるのかどうかは知らんけども!!
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