真実の行方

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俺は彼女の名前を知らない。 年齢や職業など知る術もないが興味はあるもののそこまでする気もない。歳は俺と同い年くらいの20歳前半か少し年上。小柄で童顔、服の上からでもわかる肉付きの良い体型は俺好みだった。彼女に会う事が退屈な仕事に変化をもたらす細やかな楽しみだった。 彼女を始めて認めたのは3ヶ月前になる。毎週店を訪れる彼女を次第に意識するようになり俺の中で彼女は特別な客になっていった。彼女もこれだけ顔を合わせれば俺の存在は認識しているはずだ。工藤が働き始めた事によって仕事がスムーズに終わり、今まで以上に彼女へ意識を向ける事が容易になった。ここらでもう一歩彼女にアプローチをかけたいところ。 さて、どうするか。 紙に書いた連絡先を渡す?素直に気持ちを伝える? いや、もう少しコミュニケーションをとって距離を詰め時間を費やした方が良いか?下心丸出しの妄想が脳内を駆け巡る。そもそも結婚しているのだろうか?そうなると旦那は?もしかして子供はいるのか?やがて脳内を駆け巡る思考はゆっくりと速度を落としていった。原因はわかっている。どんなに昼間に睡眠をとった所で、彼女のように決まりきった時間に睡魔が訪れる。俺は睡魔に抗うこともせずにあっさりと受け入れ眠りについた。 それから数日後、俺は麻美と千葉のアミューズメントパークを訪れた。麻美とは高校の同級生で互いに暇をもて余していると遊ぶ仲だ。いつも麻美から連絡があって俺の時間が合えば会う。今日はストレスが溜まったから発散したいと連絡があり麻美に付き合う事にした。 麻美とは彼氏彼女の関係ではない。男女の一線は越えているが、それ以上の関係でもない。俺がそれを求めている訳でもなければ、麻美がそれを求めているようにも見えない。今の関係性が楽だが麻美と過ごす時間に刺激が失くなってきた。要は麻美との関係に飽き出していた訳だ。刺激がなく麻美に対する興味を失う一方で『彼女』に対する好奇心が尽きない。こうして麻美と会ってからも、脳内の隅には数日前に会った彼女の顔を思い浮かべている。明日の深夜は彼女が店を訪れるはずだ。名前も知らない彼女への想いに溢れ恋い焦がれる。
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