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バックヤードに入ると恰幅のよいスーツ姿の男性が2人立っていた。俺を目にとめた中年の方が俺を呼び頷くと自身の名を告げた。中年に倣って青年も名前を告げる。青年の方は俺と歳が変わらないように見えた。2人共早口で名を聞き取れなかった。青年が訪れた経緯を話し始める。
店の近くで事件が起きた。事件が起きた時間が俺が働いていた時間帯の為、不審な人物を目撃しなかったか聞きたかったようだ。店内外の監視カメラでは不十分だった様子。2人が俺を険しい表情で見つめる中、昨夜の記憶を思い返すも特に気になった人物もいなかった。俺の答えに2人は明らかに肩を落とした。その2人の反応に何故か俺が傷ついた。だから食い下がるように尋ねた。
「……あの、事件って何の事件なんですか?」
青年刑事が中年刑事に目配せをした。中年の合図を受け青年刑事が胸ポケットから1枚の写真を取り出し俺に見せる。
「この男性に見覚えありますか?」
「……いえ」
頭を振る俺に青年刑事は「亡くなりました」と事務的に述べた。続けて「不審な人物を見かけたらご連絡下さい」と名刺を渡される。そこで始めて青年刑事の名前を認識した。すると2人は足早にバックヤードを抜け、オーナーと何やら話し込みそれが終わると店を出ていった。オーナーが俺に気をかけて言葉を寄越すも軽く会釈をして店を出た。自宅に着くとベッドに倒れこんだ。仰向けになりスマホを取り出すと数日前に撮った写真を開いた。
「……やっぱり」
青年刑事が俺に見せた写真の男に見覚えがあった。
死んだ男はテーマパークで彼女の隣にいた筋骨隆々の男だった。
そこから俺は思考を巡らせた。写真を見せられてから睡魔はこない。好奇心が支配していた。続けて事件に関するネットのカキコミを探す。SNSが盛んな時代の為情報は溢れていた。それほど苦労をせずに事件の概要が見えてきた。
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