真実の行方

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「工藤君が逮捕されたんだ」 「……えっ?」 「昨日、逮捕されたそうなんだけどーー」 その後オーナーは俺が尋ねていないにも関わらずまくし立てた。事件の犯人は工藤だった。工藤が自供したようだ。工藤は男を殺し逃亡を繰り返していた。最後は漫画喫茶にいた所で捕まったようだ。刑事がマンションの防犯カメラの映像から工藤の行方を追っていた事。工藤は宅配業者を装ってマンションを訪れていたが店の防犯カメラを刑事が見て以前から怪しんでいたようだ。背格好が似ている事と工藤が事件当日から行方をくらましている事に。そして工藤は以前から彼女のストーカーをしていたようだった。最後にオーナーが口外しないように釘を刺された。殺人犯が店で働いていた事を知られたら風評被害になると自分の店の心配ばかり。 電話を切ると推測を始めた。最後に彼女が店を訪れた時、工藤は彼女を見つけた。事前に大方彼女が住んでいる場所に目をつけていたのだろう。先程彼女が見せた俺に対する敵意の目は俺をストーカーだと勘違いしたという事か。つまり彼女は工藤と面識がなかった? そもそも工藤はどうして筋肉男が彼氏だと気付き犯行に及んだのだろうか。殺したくなるほど彼女を愛していたという事? 奇行を実施する男の考えは理解出来ない。 それから2週間程経った時、彼女が店を訪れた。あれから彼女に対する興味を失っていた為に今日がその日だと気付かなかった。だが今日の彼女は商品を物色する事もなく一直線に俺が立つレジまで近づいてきた。 「あの……先日は失礼な事を言ってしまいすみませんでした」いきなり頭を下げてくる彼女に訳がわからず聞き返すと俺をストーカーと勘違いした時の謝罪だった。律儀な女性だ。ストーカーが働いていた店を訪れ、わざわざ俺に会いにきた彼女に好感を覚える。幸い店には客がいなかったので会話は続いた。彼女とこんなに話した事は初めてだ。彼女は昼職と水商売を掛け持ちしていて深夜の仕事帰りに店を訪れていた事や殺された男とは店で知り合いストーカーに悩んでいた彼女を守る為に男が自身のマンションに彼女を住まわせていたようだった。
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